著者
栗山 翔 松田 明久 山田 岳史 園田 寛道 進士 誠一 代永 和秀 岩井 拓磨 武田 幸樹 上田 康二 宮坂 俊光 香中 伸太郎 吉田 寛
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.57-61, 2023-04-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,フレイル,サルコペニアが癌の治療成績に影響するという報告が多く見られる.身体的フレイルの重要な要因がサルコペニアであり,慢性炎症が原因となる.慢性炎症にはDAMPs(Damage‐Associated Molecular Patterns)が関与しており,circulating cell‐free DNA(ccfDNA)もDAMPsの一種であると考えられている.われわれは,ccfDNAの断片化の程度を測定し,周術期サルコペニア,ccfDNAと癌の治療成績の関連を検討した.術後半年後に撮影した腹部CT検査でPMI(Psoas Muscle Index)を測定したところ術後合併症を発症した群ではPMIが低値で,無再発生存期間が不良であった.また,術前にccfDNA LF(Long Fragment)を認めた症例では無再発生存期間が不良であった.術後合併症を発症しないことが重要であり,そのためにはサルコペニア,慢性炎症への対策が非常に重要であると考えられる.
著者
山田 岳史 菅 隼人 松本 智司 小泉 岐博 進士 誠一 松田 明久 山岸 杏彌 横山 康行 高橋 吾郎 岩井 琢磨 青木 悠人 町田 幹 内田 英二
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.403-407, 2015-05-31 (Released:2015-09-08)
参考文献数
11

【背景】絞扼性イレウスの本態は消化管の虚血であるため,診断には造影CTが重要であるが,どのような所見が有用であるか明らかではない。【方法】術前に造影CTが施行された壊死性絞扼性イレウス15例と非壊死性絞扼性イレウス25例を対象に造影CT所見を検討した。【結果】70%以上の頻度で認められたものは腸間膜血管の拡張(70.0%),腸管壁の肥厚(72.5%),腸間膜浮腫(80.0%)であった。腹水,腸管壁の造影欠損,Kerckringの不明瞭化,腸間膜混濁は壊死群で有意に高率に認めた。【考察】絞扼性イレウスを造影CTで早期に診断するには,壊死性絞扼性イレウスで多く認められる,腹水や造影欠損よりも腸間膜血管の拡張,腸管壁の肥厚,腸間膜浮腫等の変化を見逃さないことが重要である。
著者
松田 明久 宮下 正夫 山田 真吏奈 松本 智司 櫻澤 信行 川野 陽一 関口 久美子 松谷 毅 山田 岳史 内田 英二
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.157-164, 2017 (Released:2018-02-22)
参考文献数
29

手術侵襲などによる組織障害や感染が生じた生体では,障害・感染を受けた部位のみならず全身からさまざまな外因性・内因性のメディエーターが放出される.リゾリン脂質は,近年の研究により多彩な生理活性を有する脂質メディエーターとして注目されており,その免疫学的作用も豊富であることから侵襲後の炎症性生体反応にも大きく関与している可能性が高い.本稿では主要なリゾリン脂質であるリゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine:LPC), リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid:LPA), リゾスフィンゴシン脂質(スフィンゴシン-1- リン酸(sphingosine 1-phosphate:S1P)の3 つに焦点を当て,手術侵襲後の炎症性生体反応における役割について,自験結果に文献的考察を加え概説する.