著者
萩原 信敏 松谷 毅 野村 務 藤田 逸郎 金沢 義一 櫻澤 信行 宮下 正夫 内田 英二
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.512-520, 2014 (Released:2014-03-05)
参考文献数
31

食道癌術後長期生存例の増加にともない,再建胃管癌例も増えている.今回,年代別で胃管癌の臨床病理学的項目,治療,予後などの変化について,当科の胃管癌9例と本邦報告156例を集計した165例において3期に分けて検討した.臨床病理学的検討では,発生部位は胃管下部に多く,組織型は7割が管状腺癌であり,年代で有意な差は認めなかった.内視鏡検査での発見症例が最近10年では7割を占め,早期発見例も年々増加していた.2003年以前に内視鏡治療を行った症例は20%であったが,最近10年では約40%まで増加し予後も改善傾向を示した.胃管癌の特徴を理解し,定期的な検査で早期発見することで,さらなる予後の改善につながると考えられた.
著者
岩切 勝彦 川見 典之 田中 由理子 佐野 弘仁 星原 芳雄 野村 務 松谷 毅 萩原 信敏 宮下 正夫 坂本 長逸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.710-721, 2012 (Released:2012-05-28)
参考文献数
26

アカラシアは下部食道括約筋(LES)の弛緩不全および食道体部の蠕動障害により,嚥下障害をきたす1次性食道運動障害の代表的疾患である.アカラシアの確定診断は食道内圧検査により行われるが内視鏡検査も有用である.LES弛緩不全を認めない場合には,下部食道を深吸気時に観察すると柵状血管の下端を含めた全体像が観察されるが,アカラシア患者では深吸気時にも柵状血管の全体像は観察されず,下部食道の狭窄部に集中する全周性の襞像が観察される.アカラシアのバルーン拡張術は有効な治療法の1つである.拡張術において重要なことは拡張時のバルーンの切れこみを消失させることであるが,切れこみは低圧な状態でも消失させることが可能であり,ゆっくりと低圧にて加圧することが重要である.最も使用される30mmバルーンでの当科における拡張術の治療成功率は約75%である.治療成功率に関連する因子は年齢であり,30歳未満の患者に対するバルーン拡張術の成功例はないが,30~40歳未満の患者での治療成功率は約60%,40歳以上では約85%である.
著者
松田 明久 宮下 正夫 山田 真吏奈 松本 智司 櫻澤 信行 川野 陽一 関口 久美子 松谷 毅 山田 岳史 内田 英二
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.157-164, 2017 (Released:2018-02-22)
参考文献数
29

手術侵襲などによる組織障害や感染が生じた生体では,障害・感染を受けた部位のみならず全身からさまざまな外因性・内因性のメディエーターが放出される.リゾリン脂質は,近年の研究により多彩な生理活性を有する脂質メディエーターとして注目されており,その免疫学的作用も豊富であることから侵襲後の炎症性生体反応にも大きく関与している可能性が高い.本稿では主要なリゾリン脂質であるリゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine:LPC), リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid:LPA), リゾスフィンゴシン脂質(スフィンゴシン-1- リン酸(sphingosine 1-phosphate:S1P)の3 つに焦点を当て,手術侵襲後の炎症性生体反応における役割について,自験結果に文献的考察を加え概説する.
著者
中村 慶春 恩田 昌彦 内田 英二 井上 松応 山村 進 松谷 毅 丸山 弘 横山 滋彦 石川 紀行 田尻 孝 山下 精彦 山口 敏和 憚 暁青
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.2848-2852_1, 1996-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

膵癌を疑われた33例に対して, 十二指腸乳頭括約筋を弛緩させるためにニトログリセリン舌下錠を投与し経口的膵管内視鏡検査を施行した. 最大2錠 (0.6mg) の投与により外径2.2mmの膵管鏡は容易に乳頭を通過しえた (29/33, 87.9%) . 通過不能の4例はすべて膵頭部癌症例で, カニュレーションを深く行えず十分にガイドワイヤーを留置できなかったことが原因であった. 乳頭通過後に膵管内を尾部あるいは病変まで観察できたものが29例中23例であった. 血圧の変動はニトログリセリン非投与群と比し有意差を認めず, 合併症は1例も経験しなかった. ニトログリセリン投与は簡便かつ安全で, 確実に乳頭を開大させることが可能で, 経口的膵管鏡検査において有効な方法と思われた.