著者
鈴木 大地 松葉 剛 稲葉 裕 白石 安男
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.415-426, 2006-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
44

目的: 近年プールを設置する自治体が増えており, 水泳や水中運動を健康づくり事業に取り入れるケースも増えている. 当研究は水泳や水中運動がどのように住民の生活習慣や健康状態に影響しているかを調べることを目的に行った. 方法: 2004年K市において健康関連イベントおよびこれまで水泳. 水中運動事業に参加している257名を対象に質問紙による調査および血圧, 内臓周囲脂肪, 血液生化学データ (血算, 肝機能, 血清脂質, 血糖) の測定を行った. 結果と考察: 対象者を運動習慣により〈水中運動群〉〈水中運動以外の運動群〉〈運動習慣のない群〉の3群に分け, 心理的要因, 食事, 血液生化学検査を含む身体的要因について分布の差について調べた. 心理的要因については, 健康状態や生活満足度, 幸福感をたずねた質問では良好であるとの回答が水中運動群および水中運動以外の運動群に多く統計学的有意差が認められた (p<0.01). また食習慣的要因では水中運動群および水中運動以外の運動群で〈塩辛い食事〉を好まない傾向が認められた (p<0.05). 血液生化学データのうちHDLコレステロールの値について水中運動群と水中運動以外の運動群, および水中運動群と運動習慣のない群の間に有意差を認め, いずれも水中運動群が高値を示した (水中運動群73.2mg/dl, 水中運動以外の運動群63.2mg/dl, 運動習慣のない群63.2mg/dl, いずれもp<0.01). その他, 収縮期血圧において同様に水中運動群と水中運動以外の運動群, および水中運動群と運動習慣のない群の間に有意差を認め, いずれも水中運動群が低値を示した (水中運動群73.3mmHg, 水中運動以外の運動群78.1mmHg, 運動習慣のない群79.4mmHg, いずれもP<0.01). また健康な生活に与える影響について他の生活習慣との関わりを知るために, 因果モデルを作成し共分散構造分析にて分析を行った. その結果, 定期的な運動習慣のなかでも水中運動が, 健康な生活との間により強い関連があることが示された.