著者
松野 薫 宮林 茂幸 関岡 東生
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.45-50, 2000-03-10
被引用文献数
1

本研究は,第109回日本林学会で報告した奥地山村と比較するために山村地域の中でも都市近郊に位置する神奈川県津久井町青根地区を事例に考察するものである。特に戦後の山村地域における生活と森林利用との関わりの変化に注目し,現在青根地区が抱える問題を農家の聞き取り調査をもとに分析した。その結果次のことが明らかとなった。一つは,青根地区は首都圏に近いという立地条件にあって農家の就労構造は第2種兼業が大半を占めるとともに恒常的勤務者が主体となっている。二つには,農家の農林業所得はきわめて低く,将来的に経営規模を大きく縮小する傾向にある。三つには,大きな人口減少の変化はみられないが,2〜3世代同居が比較的多く認められ「家」を相続する後継ぎを持ちながらも「農林業」の後継者はいないという現状にある。四つには,このような状況の中で,地域内における森林管理の担い手が不足し,放置される森林が目立っている。五つにはダム開発の影響で地価が高騰するとともに都市地域との交流事業やまた公園整備などが進められていることなどが明らかになった。