- 著者
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関岡 東生
- 出版者
- 東京農業大学
- 雑誌
- 東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.3, pp.175-184, 2012-12-14
近年,一般市民を対象とした森林教育の充実が望まれる中,林業普及指導事業にも森林教育の実施主体として機能することが期待されつつある。林業普及指導事業では,1990年代より,普及の対象に一般市民を加えるとともに,一般市民を対象とする普及活動においては,林家や林業研究グループが直接的な実施主体として機能することが企図されてきた。本論文に際しては,こうした現状を踏まえ,まず,林業研究グループの現状を把握し,それをもとに,林業研究グループ自身が森林教育の実施主体としての活動を望むものであるのか,さらには,その機能を有するものであるのか否かを検証し,そして,この機能の充分な発揮を妨げる要因を把握することを主な目的としている。調査は,全国の全ての林業研究グループ(1,487グループ)を対象として,郵送による質問紙法によって実施した。その結果,[◯!1]多くのグループで活動が停滞しつつある。[◯!2]休眠あるいは解散を余儀なくされるグループが頻出している。[◯!3]グループの多様化が進み,活発なグループとそうでないグループの格差が増大しつつある。[◯!4]会員規模の減少などの事態を招きつつある。という林業研究グループの現状が明らかとなった。さらに,森林教育の実施については,[◯!1]既に一定のグループが実施実績を有すること,[◯!2]しかしながら,一般市民を対象とした実践のための研修等については極めて不十分な状況にあるということが確認され,林業研究グループは森林教育の実践主体として期待される存在でありながらも,実践の充実を期する上では多くの課題を有することが明らかになった。