著者
関岡 東生 南橋 友香 Haruo Sekioka Minamihashi Yuka
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.205-215,

群馬県川場村は,1975年から「農業プラス観光」を地域振興の基本理念として種々の地域振興策を講じてきた山村である。その結果として,過疎地域指定(1971年)も2000年には解除される等の成果を生んでいる。本稿では,この「農業プラス観光」を支える基盤である民間宿泊業のうち特に民宿に注目し,現状の分析と若干の考察を行った。その結果,民宿業の現下の優越性として,[◯!1]総じて高いリピート率を誇ること,[◯!2]各民宿毎に特徴ある客層を対象とした経営を実現していること,[◯!3]多くにおいて後継者を有していること,等を確認することができた。一方で,解決を要する点として,[◯!1]スキー客への依存,[◯!2]地域社会への経済的貢献度の低さ,[◯!3]他機関・他組織との連携の弱さ,[◯!4]交流事業との連携の弱さ等も明らかとなった。
著者
窪江 優美 関岡 東生 宮林 茂幸
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

 都道府県において産出される木材を地域毎に定められた制度によって認証する取り組みが盛んになりつつある。こうした認証制度は、産地・品質・合法性・安全性を一定水準で保証し、県産材という付加価値を有するブランド材とすることを目的とするものが多い。こうしたことから都道府県および認証団体を対象として県産材認証制度の現状と意識に関する調査を行った。その結果、認証制度の有無と活用・PR方法・県産材の今後についての現状が明らかになり、各都道府県とも制度の普及は一定の成果を挙げているという結果が得られた。県産材利用の取り組みは県内を中心に行われ、県外への拡大は活発ではない傾向にある。将来的に国産材の利用拡大や普及を考えた場合、県外への普及を促進しなければ、都道府県内での木材需給体制には限界が生じてくる。また、県産材や地域材は用語としても極めて多様に定義されおり、県境を越えた展開を阻むものとなっている現状も明らかとなった。以上のことから、県産材および地域材の定義を明確にしていくことともに、県産材・地域材認証の連携を考慮した流通のあり方を検討することが課題である。
著者
関岡 東生 南橋 友香
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.205-215, 2012-12-14

群馬県川場村は,1975年から「農業プラス観光」を地域振興の基本理念として種々の地域振興策を講じてきた山村である。その結果として,過疎地域指定(1971年)も2000年には解除される等の成果を生んでいる。本稿では,この「農業プラス観光」を支える基盤である民間宿泊業のうち特に民宿に注目し,現状の分析と若干の考察を行った。その結果,民宿業の現下の優越性として,[◯!1]総じて高いリピート率を誇ること,[◯!2]各民宿毎に特徴ある客層を対象とした経営を実現していること,[◯!3]多くにおいて後継者を有していること,等を確認することができた。一方で,解決を要する点として,[◯!1]スキー客への依存,[◯!2]地域社会への経済的貢献度の低さ,[◯!3]他機関・他組織との連携の弱さ,[◯!4]交流事業との連携の弱さ等も明らかとなった。
著者
土屋 智樹 関岡 東生 山下 詠子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 東京都における木炭産業の歴史について同業組合政策との関連で整理を行い、商人貸付により生産を行う,またはこれに類似する前期的な生産体系が主体であった近代日本における木炭生産の変化の要因を、流通組織の機能および発展段階から考察を試みた。 わが国における重要物産同業組合を核とする産業振興政策は1884年公布の「同業組合準則」、1897年公布の「重要輸出品同業組合法」、1900年公布の「重要物産同業組合法」等を根拠法として展開した。木炭については、「重要物産同業組合法」に準拠する同業組合によって過当競争の防止や製品検査による品質の向上が取り組まれた。 東京都における木炭の同業組合は1909年に設立されはじめ、1931年までに計6組合が設立された。しかし、1930年以降は農村恐慌を背景とする産業組合の拡充や1932年の「商業組合法」の公布により、同業組合以外の木炭関連の流通組織が推進された。そして1943年には「商工組合法」により燃料配給統制組合が東京都を含む主要消費都道府県に設立された。この組合は、第二次世界大戦後も統制経済の下で燃料林産組合として木炭の配給調整機関として機能したこと等が明らかになった。</p>
著者
松野 薫 宮林 茂幸 関岡 東生
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.45-50, 2000-03-10
被引用文献数
1

本研究は,第109回日本林学会で報告した奥地山村と比較するために山村地域の中でも都市近郊に位置する神奈川県津久井町青根地区を事例に考察するものである。特に戦後の山村地域における生活と森林利用との関わりの変化に注目し,現在青根地区が抱える問題を農家の聞き取り調査をもとに分析した。その結果次のことが明らかとなった。一つは,青根地区は首都圏に近いという立地条件にあって農家の就労構造は第2種兼業が大半を占めるとともに恒常的勤務者が主体となっている。二つには,農家の農林業所得はきわめて低く,将来的に経営規模を大きく縮小する傾向にある。三つには,大きな人口減少の変化はみられないが,2〜3世代同居が比較的多く認められ「家」を相続する後継ぎを持ちながらも「農林業」の後継者はいないという現状にある。四つには,このような状況の中で,地域内における森林管理の担い手が不足し,放置される森林が目立っている。五つにはダム開発の影響で地価が高騰するとともに都市地域との交流事業やまた公園整備などが進められていることなどが明らかになった。
著者
関岡 東生
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.175-184, 2012-12-14

近年,一般市民を対象とした森林教育の充実が望まれる中,林業普及指導事業にも森林教育の実施主体として機能することが期待されつつある。林業普及指導事業では,1990年代より,普及の対象に一般市民を加えるとともに,一般市民を対象とする普及活動においては,林家や林業研究グループが直接的な実施主体として機能することが企図されてきた。本論文に際しては,こうした現状を踏まえ,まず,林業研究グループの現状を把握し,それをもとに,林業研究グループ自身が森林教育の実施主体としての活動を望むものであるのか,さらには,その機能を有するものであるのか否かを検証し,そして,この機能の充分な発揮を妨げる要因を把握することを主な目的としている。調査は,全国の全ての林業研究グループ(1,487グループ)を対象として,郵送による質問紙法によって実施した。その結果,[◯!1]多くのグループで活動が停滞しつつある。[◯!2]休眠あるいは解散を余儀なくされるグループが頻出している。[◯!3]グループの多様化が進み,活発なグループとそうでないグループの格差が増大しつつある。[◯!4]会員規模の減少などの事態を招きつつある。という林業研究グループの現状が明らかとなった。さらに,森林教育の実施については,[◯!1]既に一定のグループが実施実績を有すること,[◯!2]しかしながら,一般市民を対象とした実践のための研修等については極めて不十分な状況にあるということが確認され,林業研究グループは森林教育の実践主体として期待される存在でありながらも,実践の充実を期する上では多くの課題を有することが明らかになった。