- 著者
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山崎 勉
遠藤 一博
富永 一則
福田 正高
前崎 繁文
橋北 義一
板橋 明
- 出版者
- 一般社団法人 日本感染症学会
- 雑誌
- 感染症学雑誌
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.4, pp.305-311, 2004
- 被引用文献数
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埼玉医科大学附属病院では, arbekacin (ABK) 耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の分離頻度が一定の時期に増加したが, 病棟の担当者に交差感染の防止を指導することなどにより, その後はABK耐性MRSAの検出率は減少した. 多数検出された時期に由来するABK耐性MRSA 22株について, 薬剤感受性を含む生物学的表現型および<I>Sma I</I>を使用したパルスフィールドゲル電気泳動法 (PFGE) を組み合わせて疫学的検討を行った.<BR>ABK耐性MRSA株はA~Jの異なる10病棟に由来し, 外科系のA病棟由来が8株と最も多く, 以下B病棟3株, C, D, E病棟は各々2株, F, G, H, I, J病棟は各々1株であった. A病棟由来の8株では, 6株がPFGEで同一パターンを示した. PFGEにて同一パターンをとった6株は, 同様の薬剤感受性および生物学的性状パターンをとった. B病棟由来の3株のうち2株, F病棟由来の1株およびI病棟由来の1株も, PFGEは同じパターンをとり, 薬剤感受性や生物学的性状もA病棟由来の6株と同様であった.さらに, C, DおよびG病棟で分離された5株は, 各々類似したPFGEパターンをとっていた.<BR>MRSA感染症における治療薬剤を維持するためにも, 各医療施設においてABK耐性MRSAの動向を監視し, 施設内感染防止に努めることが必要と考える.