著者
林 慶雲
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.25-36, 1999-03-31 (Released:2019-07-01)

香港は, 1997年7月1日, 約150年にわたるイギリスの植民地の歴史を終え, 中国に返還された.返還後の香港は, 社会主義の国に戻ったが, 確立している資本主義的な経済体制, 自由主義的な社会体制をそのまま維持することになっており, いわゆる「一国二制度」が実施されている.イギリスの植民地時代, 香港の会計制度ならびに会計制度の一部である財務報告制度は, イギリスのそれを範としたものと思われる.しかし, 中国への返還が確実となった1980年ごろからは, 多くの香港企業が返還という現実を見こんだ企業行動をとり始めた.そのなかの1つは, さらなる経営国際化である.企業経営国際化の進展にともない, 資本市場の国際化が一層促進され, そのため, 財務報告制度の国際調和化問題も問わされるようになった.本研究は, 香港における財務報告制度を, 香港の特別な社会状況との関連から考察し, その制度の特殊性や国際会計基準との調和化などについて検討するものである.