著者
菊池 慶之 髙岡 英生 谷 和也 林 述斌
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.117-130, 2012-09-28 (Released:2012-09-28)
参考文献数
28

上海市においては,住宅制度改革が本格化した1998年以降,民間ディベロッパーの供給する居住用商品房の割合が急速に増加してきた.しかし,居住用商品房の価格は,上海市の平均世帯年収の25倍にも達しており,平均的な中流階級が居住用商品房を購入することは簡単ではない.そこで本稿では,居住用商品房購入者がどのようなプロセスを経て住宅の購入に至ったのかを明らかにすることにより,居住用商品房のアフォーダビリティを検討する.調査手法として,最初に上海市における平均世帯年収と住宅販売価格の推移を検討した上で,上海市の老公房と居住用商品房の居住者に対するアンケート調査を実施し,居住用商品房の購入価格と平均世帯年収の関係,過去の居住履歴,資金調達状況など,実際の居住用商品房購入プロセスを考察した.検討の結果,中高収入世帯の居住用商品房購入意欲は非常に高いものの,相対的な価格の高さと住宅金融の不足により,一次取得住宅としての購入は困難であることが明らかになった.また,既購入世帯においては購入以前から何らかの不動産を所有している世帯の割合が高く,現有資産の有無が居住用商品房のアフォーダビリティに大きく影響していることが示唆された.