著者
柄澤 薫冬 窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1114-1121, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
12
被引用文献数
3 2

災害により甚大な被害が発生すると元から離れた位置で復興せざるを得ない。津波や土砂災害だけでなく、火災や建物倒壊であっても多くの人が移動を強いられる。しかし、移動は往々にしてコミュニティを寸断し、人間関係の希薄化を招く。本稿では阪神淡路大震災において復興のモデルケースと名高い芦屋市若宮町を取り上げ、復興プロセスの実態と20年経た現在における住民の認識を分析した。若宮町では、良い空間であると内外から評価されているものの、震災前後の物理的空間は全く変質しており、復興事業完了直後は住民は「良い」と感じていなかった。むしろその後の復興プロセスで、新たな人間関係を形成しながら「若宮町」とは何かの概念をお互いに集団の中で醸成していくことが帰属意識につながり、満足感を得る状況が明らかとなった。