著者
柏木 航介 野口 智康 中村 美穂 半沢 篤 半田 俊之 福田 謙一
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.37-41, 2018 (Released:2019-12-04)
参考文献数
6

症例の概要:37歳男性.上顎左側第二大臼歯および眼窩部の疼痛のため,眼科を受診するも改善しなかった.その後近歯科医院を受診したところ急性上顎洞炎と診断され,クラリスロマイシンとロキソプロフェンナトリウムを処方されたが症状改善せず,当科受診.当該歯に齲蝕が認められたため齲蝕除去を行ったが症状は改善せず,1日に5回以上生じる歯痛と眼窩から側頭部にかけての拍動性の激痛は残存した.また結膜充血,鼻汁を伴い,症状が生じると診療室内を落ち着きなく動き回っていた.症状から群発頭痛を疑い,酸素投与を行ったところ症状の緩和が認められた.そのため当院内科へ対診し,スマトリプタンコハク酸塩100mgを頓服処方されたが,症状は再発し再度来院した.そこで発作性片側頭痛(Paroxysmal Hemicrania:PH)を疑い,インドメタシン50mgを処方したところ,歯痛・頭痛ともに症状が改善し,現在疼痛の再発はなく,経過良好である. 考察:PHを発症している患者の15%は歯痛を感じており,発作性の歯痛,顔面痛を訴え歯科に来院することも少なくない.今回の症例も歯痛を主訴として来院しており,診断に難渋したものの自律神経症状から神経血管性歯痛と診断しインドメタシンで除痛することが出来た. 結論:今回私達はPHによる上顎臼歯部と眼窩部の痛みに対する治療を経験した.鑑別に苦慮する神経血管性歯痛を訴える患者が来院することもあるため,歯科医師にも頭痛の知識は必須だと考えられた.