著者
高橋 郁郎 花澤 政雄 染矢 泰
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.92-98, 1937

遺傳質の平等な樽植又は鉢植の温州蜜柑樹を用ひ, ボルドウ合劑及石灰硫黄合劑撒布が, 蜜柑の品質に及ぼす影響を試驗し, 大要次の如き成績を知り得た。<br>1. ボルドウ合劑の撒布は, 蜜柑の着色を遲延せしめ, 其の濃度を淡くし,特に果梗部附近の色を不良ならしむ。<br>2. 石灰硫黄合劑の撒布は, 蜜柑の着色を促進し, その色を濃厚ならしむ。<br>3. ボルドウ合劑の撒布は, 果皮の割合を増し, 果皮と果肉の間に緩みを生ぜしめ, 果汁中の酸を増し, 糖分を減じて品質を損す。<br>4. 石灰硫黄合劑の撒布は, 果皮の割合を減じ, 其の質を脆くし, 果皮を果肉に密着せしめ, 果汁中の酸を減じ, 糖分を増し, 品質を上進す。<br>5. 果汁の酸の變化は, 初夏よりも秋期の撒布に多く, 糖分量の相違は初夏の撒布と秋期のそれとの間に大差なく, 撒布囘數多き程著しきを見た。<br>6. コロイド銅劑の使用は, ボルドウ合劑の如き不良影響無きを認めた。本試驗の詳細なる記載は「靜岡縣の柑橘」昭和12年5月號及び6, 7月號に連載する。