著者
浅井 冨雄 柯 史〓 児玉 安正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.675-684, 1998-10-25
被引用文献数
7

1987年の暖候期について東アジア・西太平洋上の雲の日変化を静止気象衛星「ひまわり」3号の赤外放射観測資料を用いて調べた。調査対象領域は北緯50度から南緯20度、東経90度から160度の範囲である。得られた主な結果は以下の通りである。(1)雲量日変化は大きな一日周期変動と小さな半日周期変動から成る。1日周期変動の振幅と位相は陸上と海上で大きく異なるが、半日周期変動の振幅と位相は陸上と海上で類似している。半日周期変動の雲量の極大は、地方時の3時〜5時と15時〜17時にみられる。(2)日周変化の位相の系統的なずれがチベット高原からその東方の中国大陸上でみられる。すなわち、雲量の極大はチベット高原上では夕方に、四川盆地では真夜中に現れる。日周変化の位相の東進速度は北米ロッキー山脈の東方でみられる降水頻度の日周変化のそれに類似している。局地的に誘起される対流活動に加えて、チベット高原で形成する雲クラスターの東進は中国大陸上の雲の日変化を理解するためには考慮されるべきであろう。(3)チベット高原の東方の中国大陸で日周変化の位相の東進は盛夏期に不明瞭になる。これは主に中国大陸で夕方局地的に発達する対流とチベット高原越えの上層偏西風の衰弱によると推測される。