著者
柳原 直人 鈴木 夏夫 菅沢 深
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この車椅子は先端に4個の車輪が付いた十字アームを用いる。この4個の車輪はスプロケットが取り付いており、これらはループ状のチェーンとスプロケットを取り付けたモータによって同時に駆動される。この車輪付き十字アーム機構は平地では車輪の回転によって走行し、車輪が前方には小型の車輪付き十字アームを先端に持った姿勢保持アームを取り付け、これにはキャスターが取り付けられている。この車椅子は車輪付き十字アーム機構の4個の車輪のうち接地している車輪が駆動輪となる。平地走行では駆動輪が取り付けられている十字アームを回転させ、左右各一輪を駆動輪として走行する。階段昇降時には姿勢保持アームに加わる荷重を減少させるために座席を駆動モータによって移動させ、車体の重心の位置を駆動輪に近づける。また、階段昇降では段差による高さの変動よって座席の角度が変化しないようにするため、姿勢保持アームの高さを調整する。車椅子の操作用のジョイスティックは、どのような利用者でも容易に操作できることを目標とし、複雑な操作を必要とせずに、平地走行モードと階段昇降モードの切り替えのみで運転できるシステムとした。この車椅子の走行実験の結果、けあげ高さ165mm、踏み面高さ320mmの階段を体重70kgの人が昇降した実験においては、一段あたりの上昇時間約3秒、降下時間約6秒で安定した昇降が可能であることが確かめられた。また、平地走行モードと階段昇降モードの切り替えが数秒で可能となり、この車椅子の技術は実用レベルまで到達したと判断している。