著者
柳田 悠太朗 仲地 ゆたか 文東 美紀 岩本 和也
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-6, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
13

DNAメチル化やヒストンタンパク質の修飾など,エピジェネティックな状態には遺伝環境相互作用が反映されており,精神疾患の病因・病態の理解のためにきわめて重要であると考えられている。セロトニントランスポーターは繰り返し配列の多型領域とDNAメチル化による転写制御を受けることから,遺伝環境相互作用研究のためのよいモデルであると考えられる。本稿では,高齢者コホート検体を利用し,正常加齢に伴う認知機能の低下や抑うつ傾向について検討した筆者らのセロトニントランスポーターでの研究例を紹介する。研究の背景と共に,臨床所見とMRI画像による脳体積およびジェノタイピングデータやDNAメチル化状態を統合することで明らかになりつつある結果を紹介し,現状の課題と今後の展望を述べる。