著者
西口 明弘 桜井 修次 城 攻 柴田 拓二
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北海道支部研究報告集. 構造系
巻号頁・発行日
no.55, pp.35-38, 1982-03

1980年12月下旬から81年1月下旬にかけて、東北・北陸地方は「三八豪雪」以来の記録的な大雪に見舞われ鉄骨構造物を中心に各地で多数の建物が倒壊した。この雪害の主要な原因の一つとして、積雪量が設計値を大幅に上回ったことによるものであることが指摘されており、特定行政庁の定める設計基準値の再検討の必要性が論じられている。北海道では小樽など一部の地域で多雪であったが全般的には大凡平年並の積雪で、「五六豪雪」には仲間入りをしなかった。それでも建物の倒壊事故が生じたが、実は特に多雪の冬でなくても積雪による建物の倒壊事故はしばしば生じているのである。多くの場合、その主要な原因として建築物設計用雪荷重の設定が適切でなかったことが数えられている。現行の建築基準法令では雪荷重を特定行政庁の定める最深積雪量と積雪の単位重量を乗じて計算することになっている。しかし最深積雪量の規定は観測資料との関連が極めて曖昧で、合理的根拠の不明な値が地域毎にそれぞれ異なった考え方で設定されている。又、積雪単位重量も多雪地域では全国的に共通して0.3と規定されているが、蓄積された実測資料に基づいた検討が十分になされているとはいえないようである。こうしたことから、設計用雪荷重を合理的に設定するには、まず積雪重量そのものを定量的に把握することが急務であることが各方面から指摘されてきた。本報は札幌及び東北・北陸各地で過去に測定された平地積雪重量に関する資料を収集し実証的な検討を試みたものである。
著者
柴田 拓二 後藤 康明 城 攻 城 収
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

耐震壁脚部の応力条件やコンクリ-トの打継ぎ条件を実験変数とする単層鉄筋コンクリ-ト造耐震壁模型7体の水平加力試験結果を用いて、壁脚部におけるスライディングの発生条件及びスライディング耐力について検討し、以下の諸点を明らかにした。なお、試験体形状は両側に柱形を有する単層1スパンモデルで、シアスパン比M/QD、コンクリ-トの脚部打継ぎの有無、躯体素材(コンクリ-トとモルタル)、脚部界面処理法、基礎スラブ厚さの5つを影響要因とする計7種各1体である。(1)試験体はすべて曲げ降伏型に設計されているが、繰り返し水平加力によってシアスパン比が大きいと曲げ破壊し、小さいと曲げ降伏後に脚部の滑り破壊に至りやすい。初期剛性に占める滑り変位の割合は、打ち継ぎがある場合と基礎梁のせいが大きい場合にやや大きい。また最大耐力時に占める滑り変位の割合は、シアスパンが小さいほど大きい。いずれも柱脚部のダボ・素材の相違の影響は殆ど無い。(2)耐震壁の層間変形角を滑り・脚部回転・剪断・曲げの4成分に分解して、繰り返し加力における剪断力と各変形成分とから求められるエネルギ-吸収量の全量に対する割合の推移は、変形成分そのものの推移と大きな相違は認められない。(3)既往の滑り破壊耐力式は、均等な圧縮応力と剪断応力が分布している応力条件から導かれたものであるが、これを曲げモ-メントを受けている壁脚部へ適用する方法として、中立軸の測定結果を考慮して壁脚部の圧縮断面積を圧縮柱断面と仮定し、均等軸力に純剪断力を受ける場合の滑り剪断応力度式3種を適用して比較した。この結果、Brirkeland式の適合が最もよく、Mattock式は曲げ亀裂後の壁脚には適合しにくい。今後は更に、シアスパン比・コンクリ-ト強度・柱軸力・柱壁軸筋量等の影響についても明確にすることが望まれる。