著者
柴田 清孝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.541-555, 1997-04-25
参考文献数
65

高層観測, ライダー, 衛星のデータは, 成層圏バックグラウンド硫酸エーロゾルが, 人為起源もしくは自然起源によって, 徐々にではあるが全球的に増加していることを示している. 本研究はこのような事実を受けて, バックグラウンドエーロゾル増加が放射過程のみでどの程度成層圏温度を変化させるかを調べたものである. 温度変化は季節変化を含む, 対流圏の条件と成層圏の力学加熱を処方するFixed Dynamical Heatingモデルで求めた. バックグラウンド濃度の2,3倍の変化(0.55ミクロンでの光学的厚さの変化は0.0087, 0.0174)に対して放射の変化, 従って温度変化は線形応答を示した. 2倍増に対する太陽, 赤外, ネット放射の放射強制力はそれぞれ-0.18, 0.03, -0.15 Wm^2であった. 3倍増に対して低緯度中下部成層圏は赤外放射が支配的であるため, 約0.15度の昇温があり季節変化は非常に小さかった. 一方, 高緯度は太陽放射が支配的で, 約0.15度の降温があり, 夏至冬至に最大で春分秋分に最小になる0.1度の振幅の半年振動が顕著であった. 緯度帯による差や南北半球の差も基本場の温度やその季節変化との関連において述べられている.