著者
柴田 理瑛 河地 庸介 行場 次朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.410, pp.129-134, 2006-11-30

シーンを見ているとき、視覚系は特定の物理的手がかりに基づいて複数の視覚刺激を別々の物体としてではなく、一つのまとまりとして判断する。本研究では複数の視覚刺激が知覚的群化により一つの物体にされることを物体単一性(object singleness)の知覚と定義し、知覚的群化の要因(近接・閉合)が物体単一性の知覚をどのように制約するかについて、motion-induced blindness(MIB)を指標として検討した。本研究では、輪郭のみの正方形(外側ターゲット)の内部にさらに正方形(内側ターゲット)が配置され、回転する格子パタンに重ねられた。その結果、外側ターゲットの内向きと内側ターゲットの外向きのエッジ間の距離(gap distance)が0.51deg以内のときに、両ターゲットは一つのまとまりとして消失することがわかった(実験1A、B)。さらに、gap distanceが0.51deg以内であっても外側ターゲットの輪郭が閉合していない条件では、それらは別々に消失することがわかった(実験2)。これらの結果から、近接と閉合の要因は物体単一性の知覚にともに寄与し、視覚的アウェアネスを変容させることがわかった。