著者
今本 美幸 栗原 伸公 熊谷 聡子 土江 節子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.322-327, 2010 (Released:2010-11-29)
参考文献数
12

【目的】管理栄養士が行う栄養教育では,対象者が理解しやすく的確な内容が伝えられる「言葉」が必要である。このうち「控える」という言葉は,対象者に塩分や動物性脂肪など摂取の減量を指示する言葉であるが,その方法や量などの明確な指示はしていないと考える。そこで我々はアンケート調査を行い,日本の兵庫県で働く管理栄養士が用いる「控える」という言葉の概念を明らかにするため,栄養指導における言葉の効果を調べた。【方法】我々は控える対象としてエネルギー,甘いもの,アルコール,動物性脂肪,塩分の5項目を選び,「控える」という言葉の指導者側の意識を調査した。【結果】管理栄養士は50%以上が栄養教育において「控える」という言葉を使用していた。管理栄養士は,対象者が行うと期待する控える方法や量に個人差があった。また管理栄養士の勤務年数3年未満,3年以上20年未満,20年以上の3群による経験年数別の比較では,塩分で差があった。【結論】「控える」という言葉はとても不明瞭であり,この言葉のみで対象者が食生活改善できるとは限らない。管理栄養士は「控える」という言葉を単独ではなく,可能な限り具体的な言葉とともに用いることが必要である。(オンラインのみ掲載)
著者
栗原 伸公 橋本 弘子
出版者
神戸女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

Heterocyclic amines (HCA)の一つであるTrp-P-1(3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido[4,3-b]indole)は、食事由来の強力な変異原性物質であり、ラットに投与すると様々な臓器に腫瘍を生じることが報告されている。近年、山根らはin vitroにおいてHCAを食物繊維が吸着することを観察したが、私たちの知る限りin vivoにおける食物繊維によるHCA吸着の検討は報告されていない。本研究では、不溶性食物繊維の一つであるセルロースと、HCAの中でも強い変異原性を示すTrp-P-1を用いて、in vitroで起こる食物繊維のHCA吸着がin vivoでも起こる結果、HCAの腸管吸収が抑制され排泄促進につながる可能性について検討した。まず10週齢SD系雄ラットに、セルロース除去食、5%セルロース含有食(通常食)または10%セルロース含有食を3日間投与した。投与後、麻酔下において十二指腸起始部と回腸末端部をそれぞれ結紮して小腸ループを作成し、ループ内にTrp-P-1溶液を注入して一定時間(5〜20分間)保持した。保持後、門脈および腹部大動脈から採血して、小腸と肝臓を摘出し、血漿、小腸内溶液および肝組織中のTrp-P-1を抽出し、HPLCにより定量した。その結果、セルロース除去食投与ラットに比べて5%セルロース含有食投与ラットでは、血漿中、小腸内溶液中および肝組織に取り込まれたTrp-P-1濃度は有意に低かった。また、10%セルロース含有食投与ラットでは、これらTrp-P-1濃度はさらに低かった。以上より、セルロース含有食を摂取することでTrp-P-1は消化管内においてセルロースに吸着され、小腸から体内への吸収が抑制さ