著者
口田 圭吾 栗原 晃子 鈴木 三義 三好 俊三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.853-859, 1997-09-25
被引用文献数
21 4

ロース芯断面内の脂肪割合を画像解析により客観的に測定する方法について検討した.脂肪交雑の2値化は,粒子ごとに閾値を決定する多重閾値法により行った.使用した入力機器はデジタルビデオカメラ,デジタル静止画キャプチャーボードおよびカラーイメージスキャナーである.これらの装置を使うことにより,フルカラー(255<sup>3</sup>色)の画像をコンピュータに取り込むことが可能となる.測定対象は畜試式牛標準脂肪交雑(BMS)の標準模型および黒毛和種去勢牛5頭のロース芯断面の写真である.ロース芯断面の写真は,カラーイメージスキャナーで,ビデオイメージはデジタル静止画キャプチャーボードでそれぞれコンピュータに取り込んだ.Visual C++で作成したプログラムで脂肪交雑粒子と赤肉部分とを多重閾値法により2値化し,その面積比から脂肪割合を算出した.画像解析による算出値と比較するための基準となる脂肪割合は,BMSをデジタルコピー機で,黒毛和種去勢牛のロース芯断面の写真をカラーレーザープリンターでそれぞれ拡大出力し,ロース芯と脂肪交雑の紙片の重量を測定することで算出した.多重閾値を基にした画像解析により算出した脂肪割合と,重量比により算出したそれとの差はBMS No. 2, No. 4, No. 7, No. 10およびNo. 12でそれぞれ0.2%,0.5%,2.1%,0.6%および4.6%以内であった.また,脂肪割合の範囲が13.6~24.4%であった黒毛和種去勢牛の画像解析による脂肪割合と重量比によるそれとの差は2%以内であった.画像解析に尾いる画像の解像度の影響は,低解像度において脂肪割合を低く算出する傾向が認められた.本研究で開発した方法を用いることで,ロース芯断面内脂肪割合の客観的で精度の高い計測が可能となった.