著者
八隅 秀二郎 工藤 寧 栗田 亮
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.338-349, 2018-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
48

膵癌診療ガイドライン(2016年版)で,長期予後が期待できる早期の膵癌とは腫瘍径が1cm以下と記載された.小膵癌をみつけるのに,画像検査で“腫瘤を探す”から,明らかな腫瘤が出現する前に微小な腫瘍による二次的変化である“膵管の異常を拾い上げる”にシフトし,さらなる画像検査と病理診断を行う流れが全国的に構築されつつある.早期膵癌発見に有効なバイオマーカーが存在しない現状では,小膵癌の臨床学的特徴を踏まえて対象者を囲い込んでいくスクリーニング戦略が求められている.最近の膵癌バイオマーカーに関しての論文も合わせて紹介する.
著者
辻 喜久 渡邉 翼 塩川 雅広 栗田 亮 澤井 勇悟 上野 憲司 塩 せいじ 宇座 徳光 児玉 裕三 小泉 幸司 磯田 裕義 渡邊 祐司 山本 博 千葉 勉
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.59-65, 2011 (Released:2011-03-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

[背景と目的]脳虚血性疾患では,虚血領域は2種類に分けられ,壊死に至る不可逆性の領域と,虚血であるものの治療によって壊死することなく治癒する可逆性虚血領域である.今回,重症急性膵炎にPerfusion CTを用いれば,可逆性虚血領域が診断できるか検討した. [方法]発症3日以内に,Perfusion CTを撮像した71人の重症急性膵炎患者を対象とした.全ての膵実質を,頭部,体部,尾部に分け,膵血流速度(FV),膵血流量(VD)をPerfusion CT(Single compartment kinetic model)にて測定した.3週間後に造影CTを行い,頭部,体部,尾部がそれぞれ壊死したか診断した. [結果]発症早期に,FV,VDどちらも低下している場合,高率に壊死した.発症早期に,FV,VD片方だけ低下している場合,壊死する場合もあれば,回復する場合もあった.発症早期に,FV,VDどちらも低下していなければ壊死しなかった. [考察]発症早期にFV,VDどちらも低下した実質は高率に壊死し,このような実質は不可逆性膵虚血/早期壊死であると考えられた.単一のParameterのみ低下した実質は,必ずしも壊死しない場合があり,こうした実質は可逆性膵虚血である場合があると考えられた.以上から,複数のPerfusion Parameterを用いることで,可逆性-非可逆性膵虚血を診断しうる可能性があると考えられたが,こうしたPerfusion CTの所見と病理との比較や,用語の定義など,今後の課題であると考えられた.