著者
森満 保 河野 正 平井 卓哉 栗田 壽男
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.7-12, 2010 (Released:2019-12-04)

2009年3月19日.宮崎県串間市大字大納恋ヶ浦の浜辺に単独座礁死したハナゴンドウ(雄)の、聴器の病理組織所見を報告した。両側鼓室胞内から、クラシカウダ属寄生虫、各十隻前後を採取した。鯨石の脱灰・HE染色による病理組織検査では、内耳炎の所見は無く、ラセン神経節にも著変を認めなかった。しかし内耳道内の蝸牛神経は、道底近辺では略正常であったが、中間部から中枢側まで、高度の変性と崩壊を認めた。また周耳骨周囲の結合組織内に散在する寄生虫卵と、輪切りにされた寄生虫体を認め、更に蝸牛周辺の結合組織内に著明な石灰化巣を認めた。顔面神経は略正常であった。単独上陸死の原因として、クラシカウダの異所寄生(聴器)により、エコーロケーション機能を失ったための採餌不能・飢餓衰弱を推測した。