- 著者
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根津 永二
- 出版者
- 愛知学院大学
- 雑誌
- 愛知学院大学論叢. 商学研究 (ISSN:02858932)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.3, pp.127-144, 2007-03-31
日銀の福井総裁は「家計の生活経営が切り拓く日本の新時代」という講演の中で, 生活におけるリスク・テイクは家計には新しい道を開き,マクロ経済的には新しいビジネスを創造する可能性を高めるだろうと述べ,積極的なリスク・テイク(リスク投資)を推奨している。しかし,積極的にリスクを取るには,リスク管理は欠かせないが,現在の金融取引環境や家計・個人の金融面の知識やリスク管理能力は,家計・個人にリスクを積極的に取るように勧めるような金融環境は整っていないように思われる。また,所得や資産の少ない階層ほど安全資産の保有比率が大きいが,低金利,株主重視・配当重視のなかで,リスク投資を行っている階層との資産格差は増大する。階層間の格差が固定しないような政策が必要になるであろう。日本では土地・住宅取得や教育費が高い。これは金融資産の選択にも影響するだろう。このような状況では,危険回避的な日本人の金融資産選択では,低利ターン・低リスク・高流動性の金融資産選択が最適な選択と判断される。これは現状の選択を最適と見なす顕現選好の理論(Theory of Revealed Preference)の考え方とも整合的である。