著者
大石 修司 桂 幸一 杉山 圭作 小林 英夫 松岡 健 永田 直一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.115-120, 1994-02-20

我々は, 経過中急速にクッシング症候群を呈した肺小細胞癌の1例を経験したので報告した.症例は51歳の女性.咳嚥及び背部痛を主訴に1989年5月当院を受診.胸部X線写真にて右中肺野に腫瘤影を認め, 右中葉原発の肺小細胞癌でT2N2M1, StageIVと診断した.化学療法(CDDP+VP-16, ADR+ACNU+VCR)を施行したが, 効果判定はNo Changeであった.1990年5月頃より易疲労感・ふらつきを覚え, 顔や手の色素江差も自覚.同年7月には著明な低K血症を呈し再入院となったが, 満月様顔貌, 四肢筋力の低下, 顔や手の色素沈着, 高血圧が確認され, 低K血症を伴う代謝性アルカローシスがあり, ACTH産生腫瘍によるクッシング症候群が疑われた、血中ACTH及びコルチゾール値は異常高値を示した.経過中にアスペルギルス肺炎を併発し第41病日に死亡.剖検にて肺原発巣と肝転移巣での腫瘍部ACTH濃度の高値を確認した.