著者
山崎 震一 山崎 健二 宮崎 高明 松岡 健司 丸山 寅巳 八木 禧徳 高桜 芳郎 伴野 昌厚
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-39, 1994 (Released:2009-06-05)
参考文献数
12
被引用文献数
6 9 10

注腸二重造影像に示された腸管に紙紐を使って盲腸,結腸の各部分,直腸の長さと内径を測定し,性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸下垂,S状結腸挙上,症状に対する統計学的分析を試みた.検査対象は男性120例,女性112例,平均年齢56.6歳であった.結果は大腸の長さは性と年齢に対して有意に関与するが,身長,体重,肥満度に対しては積極的関与はなかった.内径に対しては横行,S状結腸とも身長,体重に正の相関,年齢に負の相関があり,性差ではS状結腸の内径は女性の方が小であった.つぎに横行結腸下垂は性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸大腸の長さに,S状結腸挙上は年齢,S状結腸,大腸の長さに,便秘は性,年齢身長,体重,横行結腸S状結腸大腸の長さに,便通異常は横行結腸大腸の長さに,出血は性に相関があり,腹痛はすべてに有為差を認めなかった.
著者
中道 達也 松岡 健 笠原 次郎 松尾 亜紀子 船木 一幸
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.107-112, 2011 (Released:2012-01-17)
参考文献数
23

We conducted multi-cycle combustion experiments of a coaxial-rotary-valve pulse detonation engine (PDE) system. This PDE system showed a stable operation at the valve rotating frequencies of 5.0, 10, 15, 20, and 33 Hz. We successfully measured propellant mass flow rates, thrusts, and specific impulses in the 2-sec operation duration. The maximum thrust was 32 N at the operation frequency of 33 Hz and at the supply pressure of 0.98 MPa. The maximum specific impulse was 250 sec at the operation frequency of 33 Hz and at the supply pressure of 0.69 MPa. The partial fill ratio was varied from 0.07 to 1.14. The partial fill effect was almost identical to the previous model calculations.
著者
山口 敬之 松岡 健 八桁 純 笠原 次郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 = Journal of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.57, no.663, pp.141-147, 2009-04-05
参考文献数
22
被引用文献数
2

In the present study, a dynamics model of an inflow-drive valve for pulse detonation engines (PDEs) is proposed, in which system the inflow of the valve periodically drives the valve piston. Since the inflow-drive valve needs no energy source to drive the piston, the mass flow rate divided by the valve mass is relatively large, and the response time for the mass-flow-rate change can be short. Moreover, the inflow-state condition for the stable valve operation is not restricted. The two-cylinder three-fluid type inflow-drive valve was fabricated. The maximum mass flow rate for one valve was evaluated as 6.3g/s, in which system the mass of the piston, the spring constant, and the supplied pressure were 3.8kg, 9800N, and 1.0MPa, respectively. The total mass flow rate using propellant was evaluated as 12g/s. The PDE system was constructed by using these inflow-drive valves. This system was stably operated in the frequency of 17.52Hz.
著者
高山 正伸 二木 亮 阿部 千穂子 松岡 健 江口 淳子 陳 維嘉 長嶺 隆二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100438, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 股関節疾患のみならず膝関節疾患においても股外転筋力の重要性が指摘されており,なかでも中殿筋は特に重要視されている。中殿筋の筋力増強運動として坐位での股外転運動(坐位外転運動)を紹介している運動療法機器カタログや病院ホームページを散見する。しかし坐位における中殿筋の走行は坐位外転の運動方向と一致しない。坐位においては外転ではなく内旋運動において中殿筋は活動すると考えられる。本研究は①坐位外転運動における中殿筋の活動性は低い,②坐位内旋運動における中殿筋の活動性は高いという2つの仮説のもと,坐位外転運動と坐位内旋運動における中殿筋の活動量を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は下肢に既往がなく傷害も有していない20~43歳(平均29.6歳)の健常者14名(男性9名,女性5名)とした。股関節の運動は①一般的な股屈伸および内外転中間位での等尺性外転運動(通常外転)②坐位での等尺性外転運動(坐位外転),③坐位での等尺性内旋運動(坐位内旋)の3運動とし,計測順序はランダムとした。筋電図の導出にはTELEMYO G2(ノラクソン)を使用しサンプリング周波数1000Hzで記録した。表面電極は立位にて大転子の上方で中殿筋近位部に電極間距離4cmで貼付した。5秒間の等尺性最大随意収縮を各運動3回ずつ記録した。筋の周波数帯である10~500Hz以外の帯域をノイズとみなしフィルター処理を行った。5秒間の筋活動波形のうち3秒間を積分し平均した値を変数として用いた。統計解析は有意水準を5%としFriedman検定を行った。多重比較についてはWilcoxon符号付順位検定を行い,Bonferroniの不等式に基づき有意水準を1.6%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者にはヘルシンキ宣言に基づき結果に影響を及ぼさない範囲で研究内容を説明し同意を得た。【結果】 通常外転積分値の中央値(25パーセンタイル,75パーセンタイル)は149.5(116.0,275.0)μV・秒で坐位外転のそれは127.5(41.8,204),坐位内旋のそれは219.5(85.1,308)であった。Friedman検定の結果3運動には有意差が認められ,多重比較の結果坐位外転は坐位内旋に対して有意に活動量が劣っていた(P=0.0054)。通常外転と坐位外転にも中央値に違いがみられたが統計学的な差は認められなかった(P=0.0219)。通常外転と坐位内旋にも有意差を認めなかった(P=0.124)。最も大きな筋活動量が得られた被験者の数は通常外転4名,坐位外転1名,坐位内旋9名,逆に最も筋活動量が小さかった被験者の数は通常外転3名,坐位外転10名,坐位内旋1名であった。MMTの方法に類似している通常外転によってその他の2運動を正規化すると坐位外転の中央値は76.9(31.2,102.3)%,坐位内旋のそれは119.2(86.9,183.7)%であった。坐位外転では筋力増強運動に必要な筋活動量40%を下回る被験者が4名(14.9~31.2%)みられ,100%を超える者は3名だけであった。一方坐位内旋においては40%未満の被験者はみられず,9名の被験者が100%以上であった。最小値は69.7%であった。【考察】 股関節は球関節のため肢位によって筋作用は変化する。股関節が屈伸中間位のとき矢状面でみた中殿筋の走行は大腿骨長軸と概ね一致しており同筋は外転作用を有する。しかし股関節が屈曲位となる坐位では走行が大腿骨長軸と一致せずむしろ直角に近くなり,中殿筋の作用は外転ではなく内旋になる。本研究結果では通常外転と坐位外転に有意差を認めなかったが,効果量を0.5,有意水準を0.016,検出力を0.8に設定すると48名のサンプル数が必要で我々のサンプル数は不足している。差がないと結論付けることには慎重であるべきである。この状況下においても坐位外転と坐位内旋には有意差が認められた。本研究結果は坐位外転運動が中殿筋の筋力増強運動として非効率であることを明らかにした。加えて坐位内旋運動では通常の外転運動と同等以上の筋活動が得られることも明らかとなった。この傾向は前部線維で強くなり,後部線維では異なる結果をもたらすと予想される。どの運動によって最も大きな筋活動が得られるかは被験者によって異なっていた。その原因として坐位における骨盤の肢位が影響していると考えられる。骨盤が後傾すればするほど中殿筋の走行はより大腿骨長軸と一致する。多くの被験者に関しては坐位内旋運動で高い中殿筋の筋活動が得られたが,一部にそうでない被験者もみられた。骨盤が後傾することによって内旋運動における筋活動は低下し,逆に外転運動における活動が増加すると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究によって中殿筋に対する誤った運動指導は是正されるであろう。
著者
高山 正伸 二木 亮 阿部 千穂子 松岡 健 江口 淳子 陳 維嘉 長嶺 隆二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100438, 2013

【はじめに、目的】 股関節疾患のみならず膝関節疾患においても股外転筋力の重要性が指摘されており,なかでも中殿筋は特に重要視されている。中殿筋の筋力増強運動として坐位での股外転運動(坐位外転運動)を紹介している運動療法機器カタログや病院ホームページを散見する。しかし坐位における中殿筋の走行は坐位外転の運動方向と一致しない。坐位においては外転ではなく内旋運動において中殿筋は活動すると考えられる。本研究は①坐位外転運動における中殿筋の活動性は低い,②坐位内旋運動における中殿筋の活動性は高いという2つの仮説のもと,坐位外転運動と坐位内旋運動における中殿筋の活動量を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は下肢に既往がなく傷害も有していない20~43歳(平均29.6歳)の健常者14名(男性9名,女性5名)とした。股関節の運動は①一般的な股屈伸および内外転中間位での等尺性外転運動(通常外転)②坐位での等尺性外転運動(坐位外転),③坐位での等尺性内旋運動(坐位内旋)の3運動とし,計測順序はランダムとした。筋電図の導出にはTELEMYO G2(ノラクソン)を使用しサンプリング周波数1000Hzで記録した。表面電極は立位にて大転子の上方で中殿筋近位部に電極間距離4cmで貼付した。5秒間の等尺性最大随意収縮を各運動3回ずつ記録した。筋の周波数帯である10~500Hz以外の帯域をノイズとみなしフィルター処理を行った。5秒間の筋活動波形のうち3秒間を積分し平均した値を変数として用いた。統計解析は有意水準を5%としFriedman検定を行った。多重比較についてはWilcoxon符号付順位検定を行い,Bonferroniの不等式に基づき有意水準を1.6%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者にはヘルシンキ宣言に基づき結果に影響を及ぼさない範囲で研究内容を説明し同意を得た。【結果】 通常外転積分値の中央値(25パーセンタイル,75パーセンタイル)は149.5(116.0,275.0)μV・秒で坐位外転のそれは127.5(41.8,204),坐位内旋のそれは219.5(85.1,308)であった。Friedman検定の結果3運動には有意差が認められ,多重比較の結果坐位外転は坐位内旋に対して有意に活動量が劣っていた(P=0.0054)。通常外転と坐位外転にも中央値に違いがみられたが統計学的な差は認められなかった(P=0.0219)。通常外転と坐位内旋にも有意差を認めなかった(P=0.124)。最も大きな筋活動量が得られた被験者の数は通常外転4名,坐位外転1名,坐位内旋9名,逆に最も筋活動量が小さかった被験者の数は通常外転3名,坐位外転10名,坐位内旋1名であった。MMTの方法に類似している通常外転によってその他の2運動を正規化すると坐位外転の中央値は76.9(31.2,102.3)%,坐位内旋のそれは119.2(86.9,183.7)%であった。坐位外転では筋力増強運動に必要な筋活動量40%を下回る被験者が4名(14.9~31.2%)みられ,100%を超える者は3名だけであった。一方坐位内旋においては40%未満の被験者はみられず,9名の被験者が100%以上であった。最小値は69.7%であった。【考察】 股関節は球関節のため肢位によって筋作用は変化する。股関節が屈伸中間位のとき矢状面でみた中殿筋の走行は大腿骨長軸と概ね一致しており同筋は外転作用を有する。しかし股関節が屈曲位となる坐位では走行が大腿骨長軸と一致せずむしろ直角に近くなり,中殿筋の作用は外転ではなく内旋になる。本研究結果では通常外転と坐位外転に有意差を認めなかったが,効果量を0.5,有意水準を0.016,検出力を0.8に設定すると48名のサンプル数が必要で我々のサンプル数は不足している。差がないと結論付けることには慎重であるべきである。この状況下においても坐位外転と坐位内旋には有意差が認められた。本研究結果は坐位外転運動が中殿筋の筋力増強運動として非効率であることを明らかにした。加えて坐位内旋運動では通常の外転運動と同等以上の筋活動が得られることも明らかとなった。この傾向は前部線維で強くなり,後部線維では異なる結果をもたらすと予想される。どの運動によって最も大きな筋活動が得られるかは被験者によって異なっていた。その原因として坐位における骨盤の肢位が影響していると考えられる。骨盤が後傾すればするほど中殿筋の走行はより大腿骨長軸と一致する。多くの被験者に関しては坐位内旋運動で高い中殿筋の筋活動が得られたが,一部にそうでない被験者もみられた。骨盤が後傾することによって内旋運動における筋活動は低下し,逆に外転運動における活動が増加すると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究によって中殿筋に対する誤った運動指導は是正されるであろう。
著者
稲盛 真人 土井 光 立石 貴久 松岡 健 岩城 徹 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-31, 2009 (Released:2009-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は59歳の女性である.数年にわたる右側頭部痛のため当科を受診した.右側頭部に分枝状の圧痛をともなう索状腫瘤を触知し側頭動脈炎をうたがった.しかし,頭部MRIでは右側頭部皮下に多発性の結節を,超音波では低エコー域をともなう血流のない分枝状,索状腫瘤をみとめた.最終的に,腫瘤生検にて右耳介側頭神経に発症した孤発性神経線維腫と診断した.腫瘍は経過観察とし,疼痛は薬物療法にて著明に改善した.頭蓋外皮下組織に孤発性に発生した神経線維腫はまれであり,側頭動脈炎との鑑別や,三叉神経痛様の疼痛の原因として考慮する必要がある.
著者
中溝 智也 多田 憲正 宇田川 智宏 菊池 絵梨子 亀井 宏一 森 崇寧 蘇原 映誠 松岡 健太郎 白井 謙太朗 渡辺 章充
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2022.0206, (Released:2022-10-26)
参考文献数
34

Galloway-Mowat症候群(GAMOS)は小頭症を伴う精神発達遅滞とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)などの腎症を呈する疾患である.GAMOSにおける腎症は,治療抵抗性のため生命予後を規定する.今回シクロスポリン(CsA)で長期間の寛解を維持しているGAMOSの1例を報告する.1歳健診で精神発達遅滞,小頭症を指摘された.2歳時に蛋白尿を認め,5歳時にSRNSの基準を満たし,腎生検で巣状分節性糸球体硬化症を認めた.以上よりGAMOSと診断した.SRNSに対してCsAを導入したところ尿蛋白は減少し,7歳時に不完全寛解した.寛解維持した後にCsAの中止を試みたところ蛋白尿が増悪したため,CsAが尿蛋白減少に寄与していると判断した.腎毒性軽減のため8歳時から1日1回の投与へ変更し,14歳時の腎生検で明らかな腎毒性は認めなかった.CsAの単回投与は腎毒性を抑制し,GAMOS腎症のような遺伝性SRNSの予後改善に有効な可能性がある.
著者
松岡 健一郎
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.108-116, 2020 (Released:2020-10-13)

In 1802, Schelling and Hegel published a very polemical text “On the system of the absolute identity” in which Schelling stipulated that the absolute can be grasped only in the form of “antinomy”. This conception strongly influenced by Hegel demanded that Schelling revise his previous thought of total system in order to defend himself against some critiques Reinhold had stirred up. Schelling suggested his system of philosophy that had a new structure made of crossed antinomies, namely, antinomy between ideality and reality, and between correlation and indifference. He prescribed this structure as an “entrance” into his speculative idealism.
著者
松岡 健一郎
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.83, 2018 (Released:2020-03-21)

In den drei Rezensionen an den Werken Jacobis verwirft Friedrich Schlegel nicht nur den Indivi- dualismus oder Subjektivismus, in dem Jacobi versucht, eine unmittelbare Gewissheit durch „Salto mortale“ zu verteidigen, sondern auch die unrechte Fassung der göttlichen Offenbarung, aus der Ja- cobi von der religiösen Sache spricht. Diesem setzt Schlegel einen christlichen Gedanken, der Jacobi mangelt, und der durch „Herablassung des Gottes (zu Menschen)“ gekennzeichnet wird, entgegen und verweist auf einen neuen Anfangspunkt, aus dem „die christliche Philosophie“ Schlegels sich entwickelt und seine spätere Philosophie zu verstehen ist.
著者
松岡 健一郎
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.167, 2016 (Released:2020-03-26)

Friedrich Schlegel gives several philosophical lectures in Cologne on the assumption that the infi- nite has two conceptual figures, “infinite unity” and “infinite fullness”. In his lectures, there are two different contexts about these concepts and therefore two different entities referred by them. On the first context “infinite unity” and “infinite fullness” are referred to an original and primordial whole- ness of nature and its outside manifold. On the second context “infinite unity” and “infinite fullness” are referred to freedom of the Creator’s “overflowing love” and human’s prospective reflection of it. We can remark that these two concepts of the latter context contain Schlegel’s ethical and theological problematics and they suggest implicitly his own religious turn.
著者
原口 仁美 石崎 仁弥 西島 涼 橘 竜太郎 小野内 雄 松岡 健
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1273, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】黄川らはスポーツ活動時の体重支持における大腿四頭筋の重要性から,体重当たりの膝関節伸展筋力を体重支持指数(weight bearing index:以下WBI)として表わすことを提唱し,以後,WBIは下肢傷害予防やトレーニング処方をするための客観的な筋力評価方法として応用されている。また,山本らは立ち上がり動作を用いた下肢の筋機能評価法を考案し,WBIと立ち上がり動作に高い相関があると報告している。そのため臨床では,身体能力判定目的で膝伸展筋力測定を行う場面が多い。しかしながら,各種トレーニング,動作訓練等を行っても,実際の歩行・ADL場面になると,獲得した筋力が動作遂行に繋げられず苦慮するケースが多い。山中らによると足底の感覚が敏感で,中殿筋・大腿四頭筋・腓骨筋の筋力が強いほど,片脚立位姿勢が安定していたとしており,筋力と感覚には強い相関があると報告している。また,弘瀬らは,立位姿勢は視覚・前庭・体性感覚系からの感覚入力に基づき頚部・体幹・四肢の抗重力活動によって行われていると報告している。そこで,末梢(足底)知覚の詳細なテストが可能な,モノフィラメント知覚テスターを用い,知覚異常の有無と膝伸展筋力および片脚時間との関係について検証したので報告する。【方法】対象は平衡機能,下肢・体幹機能に問題のない男女20名(男性13名,女性7名)とした。また対象者に表在感覚検査(酒井医療株式会社社製,モノフィラメント知覚テスター)を施行し,知覚異常を認めた10名(平均年齢26.67歳,平均身長168.89cm,平均体重63.33kg),知覚異常を認めなかった10名(平均年齢24.80歳,平均身長167.30cm,平均体重64.00kg)の2群に分けた。異常のない群をI群,異常を認めた群をII群とした。表在感覚の評価として,腹臥位になり足部をベッドから出した状態で,足底にモノフィラメントが軽くたわむ強度で刺激を加え,3回の刺激のうち一度でも感じたものを正常とした。また足底の7箇所を刺激部位とし,それぞれ番号を付け,その部分に刺激を感じたらその番号を言ってもらうように指示した。フィラメントはNo.2.83(Green),No.3.61(Blue),No.4.31(Purple),No.4.56(Red),No.6.65(Red)の5本を使用した。片脚立位時間の計測は,平行棒内で上肢の支持をなくし,開眼・利き足(ボールを蹴る足)にて30秒を上限として2回測定し,最高値を採用した。膝伸展筋力は下腿下垂した端坐位,体幹垂直位で5秒間の最大等尺性収縮筋力を2回測定し,数値の高い方を採用した。測定にはハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製,等尺筋力測定装置μ-Tas F-1)を使用し,最大値を体重比百分率(%)に換算して行った。測定に際し,代償を防ぐため上肢は腕組みとし,対側足底は床面接地させた状態で測定を行った。統計処理にはSPSSを用い,群間の比較には対応のないt検定を,膝伸展筋力と片脚立位時間の関係にはPearsonの相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で表記した。【倫理的配慮,説明と同意】全ての被験者には動作を口頭で説明するとともに実演し,同意を得たのちに検証を行った。【結果】年齢,体重,身長に両群間で有意差は認めなかった。膝伸展筋力はI群(平均57.21±13.40),II群(平均67.53±17.91)でありI群が有意に高値を示した(p<0.05)。I群の膝伸展筋力と片脚立位時間(平均36.09±23.47)で中等度の相関(r=0.561,p<0.01)を示した。またII群の膝伸展筋力と片脚立位時間(平均40.81±20.88)に高い相関(r=0.794,p<0.01)を示した。両群間の片脚立位時間に有意差は認めなかった(p<0.15)。【考察】感覚障害の有無が,膝伸展筋力,いわゆる筋出力に影響を及ぼしている事が示唆された。これは,筋力評価・トレーニングを行う場合には,末梢からの入力系障害についても考慮する必要性があることを示す結果となった。また,膝伸展筋力と片脚立位時間で高い相関を示した事は,感覚機能を代償するために筋力に依存している事を示しており,先行研究と同様の結果であった。今後は,性差・年齢による変化の有無,知覚異常部位との関連性についても検証したい。【理学療法学研究としての意義】知覚異常を有する群で,膝伸展筋力と高い相関を示したことから,膝伸展筋力に依存することが示された。これは,足底知覚異常検査を行うことの必要性を示すものである。筋力評価・トレーニングを行うにあたり,出力系に主眼をおく方法だけでなく,入力系の評価・トレーニングも重要であると考える。今後,運動器疾患のみでなく,多くの臨床の場で検証を深めたい。