著者
三浦 真 桂田 祐介 猿渡 和子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.17, 2018 (Released:2018-06-24)
参考文献数
1

金色のシーン・エフェクトを特徴的に示すサファイアは、ゴールドシーンサファイアと商業的に呼ばれている(例えば Bui et al. (2015))。ケニア北東部が産地とされているが、流通量が限られているために研究例が非常に少なく、その詳しい産地およびその成因については不明な点が多い。そこで産地鑑別のための化学組成データベースの充実、およびその成因について探るため、 GIA 東京ラボでは 23 石のゴールドシーンサファイアについて一般的な宝石学的検査に加えレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)による微量元素の定量分析を実施した。試料は特徴的に赤鉄鉱・チタン鉄鉱の針状内包物を多数含み、それにより光が反射されることで独特のシーンエフェクトが生み出される。またジルコンや雲母、赤鉄鉱、磁鉄鉱、ダイアスポア、炭酸塩鉱物といった多様な自形~半自形内包物を含む。色あいは青色と黄色が混在するもの、黄色単色のもの、多数の内包物・亀裂により色合いが不明瞭なものがあり、透明度も亜透明から不透明と多様である。青色および黄色に着色されている部分は化学組成上ではあまり違いが見られなく、試料は全体的に鉄含有量およびガリウム/マグネシウム比が高い傾向にある。先行研究で報告されている他のゴールドシーンサファイアと組成および内包物が類似しており、本研究の試料はそれらと同じ産地を由来としている可能性が高い。ゴールドシーンサファイアの産地とされるケニアにはアルカリ玄武岩起源(Lake Turkana)もしくはサヤナイト起源(Garba Tula)の2つの鉱床が知られている。ゴールドシーンサファイアは化学組成上では Garba Tula のものに近い傾向がある。
著者
桂田 祐介
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.16, 2018 (Released:2018-06-24)
参考文献数
1

ナイジェリアでは、今世紀初頭に南東部マンビラ高地より濃色のブルーサファイアが、さらに 2014 年ごろから新たに淡色で高品質なブルーサファイアが産出し、主にバンコクの宝石市場で注目されてきた(Pardieu et al. 2014)。 2017 年以降、同国中部のジョス高地および北東部アダマワ高地のものとされる、極めて高品質なブルーサファイアとイエローサファイアが、新たに日本やバンコクを中心に流通している (私信 2017)。マンビラ高地、ジョス高地およびアダマワ高地は、先カンブリア時代の超変成岩、角閃岩、結晶片岩および片麻岩で構成される基盤岩から成り、ジョス高地の基盤には中生代に貫入した花崗岩類も分布する。ジョスおよびマンビラ両高地の間には、白亜紀および第三紀の堆積岩から成るベヌエ・トラフが位置している。いずれの高地にもカメルーン火山列を構成する火山として第三紀以降に噴出したアルカリ玄武岩が分布しており、同地産のサファイアはいずれもこれらのアルカリ玄武岩に由来すると考えられる。玄武岩起源のコランダムは、捕獲結晶としてマグマに取り込まれたコランダム結晶がマグマの影響を受けるため、交代作用のほか包有物の変化や再結晶化などの変質が起きる。そのため、包有物や微量元素の特徴が似通っており、産地の鑑別は極めて困難である。しかしながら、同時期に噴出した一連のアルカリ玄武岩に産するコランダムであっても、マグマに取り込まれる以前の特徴が微量元素に反映されている可能性がある。ナイジェリアのサファイアは、それらが由来する玄武岩が貫入する基盤岩がわずかに異なっている点において、上記仮説を検証できる理想的な試料であると期待できる。本研究では、こうした観点から玄武岩起源サファイアの産地鑑別の精度を向上させることを目的に、ジョス高地に位置するカドゥナ州アンタン(以下アンタン)、アダマワ高地に位置するゴンベ州フトゥクおよびクラニ(以下ゴンベ)より産出したとされるブルー、グリーン、イエローのサファイアについて、レーザーアブレーション・誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)によって得られた微量元素の濃度を比較した。その結果、アンタンは鉄が低くバナジウムが高いグループに、ゴンベは鉄が高くバナジウムが低いグループに分類できた。なお、マンビラ高地のサファイアはより広い微量元素の分布を示すもののバナジウムが低い傾向にある。今後は、玄武岩周辺の地質調査も含めてサファイアの微量元素との関連を精査する必要がある。