著者
猪又 直子 池澤 善郎 守田 亜希子 桐野 実緒 山崎 晴名 山口 絢子 山根 裕美子 立脇 聡子 広門 未知子 近藤 恵
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1276-1284, 2007
参考文献数
13
被引用文献数
5

【背景・目的】本邦では多数の植物由来食物による口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)を検討した報告は稀である.そこで,本研究では本疾患の臨床的特徴と花粉感作との関連性を明らかにするため,OAS診断例63例について検討した.【方法】6年間に植物由来食物摂取後の口腔症状を自覚した例に被疑食物と花粉のプリックテスト(SPT)や特異IgE測定(CAP-FEIA : CAP)を施行した.【結果】被疑食物のSPTが陽性となったOAS診断例63例(男 : 女=1 : 2,平均年齢 : 28.7歳)の原因食品はリンゴ13例,モモ12例,キウイ12例,メロン11例であった.モモは口腔以外の症状を高率に誘発し,モモとウメの各1例でアナフィラキシーショックに至った.上位4食物のSPT陽性率は55.0〜63.2%であった.リンゴではCAPとSPTと間に相関をみとめたが(r=0.39,p<0.05),メロン,モモ,キウイではみとめられなかった.花粉症の合併は66.1%と高率で,花粉のCAP陽性率はリンゴではハンノキで,メロンではカモガヤ,ヨモギ,ブタクサで高い傾向があった.【考察】SPTとCAPの陽性率は食物の種類によって大きく異なる傾向があり,また,全体として患者の訴えより低い.現時点では,植物由来食物によるOASを診断する際に皮膚テストを用いるほうがよいと考えた.