著者
山口 絢子 猪又 直子 広門 未知子 嶋倉 邦嘉 塩見 一雄 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-53, 2007-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
3

20歳女性.乳児期よりアトピー性皮膚炎.幼少時より生魚を接触した際に〓痒を認めたが経口摂取は可能であった.2年前に回転寿司屋でアルバイトを開始してから,数滴の魚液に接触しただけで手の腫脹が出現した.1年前からはシタビラメやサンマ,アジ,サケ,ホッケ,ブリを加熱調理して摂取時に口唇〓痒や腫脹,アナゴ摂取時に喉頭閉塞感や嗄声,エビやカニを摂取時に口唇腫脹,アワビに似た貝を摂取時に喘鳴や嗄声,呼吸困難,全身性蕁麻疹が出現した.特異IgE抗体やプリックテストでは硬骨魚綱,甲殻鋼,軟体動物等多種で陽性.焼シタビラメによる口含み試験では口唇違和感が出現し,経口負荷試験では口唇腫脹や喉頭閉塞感,嚥下困難感,腹痛が出現した.パルブアルブミンとコラーゲンに対する血清特異IgE抗体は,ELISA法にて検出.以上よりシーフードによる職業性の接触蕁麻疹と口腔アレルギー症候群と診断した.
著者
猪又 直子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.491-497, 2021-03-20 (Released:2021-03-20)
参考文献数
26

近年,食物アレルギーの発症機序において経皮感作の重要性が認識されてきた.これまでに報告された経皮感作型食物アレルギーは5つに大別することができる.すなわち,(1)アトピー性皮膚炎乳児に発症する食物アレルギー,(2)美容性,(3)職業性,(4)動物刺咬傷によるもの,(5)動物飼育によるものである.前3者の感作源は食品やその成分であるのに対し,後2者は生きた動物由来の成分であり,食品との交差反応によって食物アレルギーが誘発される.
著者
猪又 直子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.158-160, 2016-04-10

summary納豆アレルギーは,IgE介在性アレルギーにかかわらず,摂取後約半日経ってから発症し,その多くが全身症状に発展する遅発性アナフィラキシー(late-onset anaphylaxis)の臨床型をとる.興味深いことに,患者の多く(約8割)はサーフィンやダイビングなどのマリン・スポーツ愛好家であり,納豆の主要アレルゲンであるポリガンマグルタミン酸(PGA)はクラゲの触手でも産生されることから,感作機序として「クラゲ刺傷による経皮感作」の可能性を疑っている.これまで「遅発性アナフィラキシー」という臨床型ゆえに,本症の診断は難しかったが,マリン・スポーツ歴の聴取は診断に繋がる有力な手がかりになるものと期待される.
著者
織田 好子 一角 直行 堀川 達弥 猪又 直子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.558-561, 2016-07-01

要約 41歳,男性.約10年前から全身の蕁麻疹・血圧低下・呼吸困難感などのアナフィラキシー症状を繰り返し,そのたびにエピペン®の自己注射を行っていた.さまざまな病院で多数の食品のプリックテストやスクラッチテスト,血清特異IgE抗体の検査を受けたが,長い間原因不明であった.今回,納豆摂取の2時間後に呼吸困難感が生じたため,納豆およびポリガンマグルタミン酸(poly gamma-glutamic acid:PGA)のプリックテストを施行したところ,両者で陽性であった.患者はサーファーであり,過去に頻回のクラゲ刺傷歴があった.PGAは冷やし中華のスープや種々の調味料などに含まれており,自験例の過去のアナフィラキシーのエピソードの中にもそれらを摂取して発症していた可能性が疑われた.クラゲ刺傷既往のある原因不明のアナフィラキシー患者の原因抗原としてPGAを考慮する必要があると考える.
著者
猪又 直子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.11, pp.2581-2587, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
13

血管性浮腫は,原則,蕁麻疹を合併しないブラジキニン起因性と,蕁麻疹を合併しやすいマスト細胞メディエーター起因性に大別される.前者の代表例,遺伝性血管性浮腫は,喉頭や消化管などの粘膜の浮腫が単独で現れることもあり致死的になる.近年,その新規治療薬として急性発作時のB2受容体拮抗薬,長期予防のブラジキニン阻害薬や抗ヒト血漿カリクレイン抗体,C1-インヒビター阻害薬などが登場し,より安全な管理が可能になった.
著者
猪又 直子 池澤 善郎 守田 亜希子 桐野 実緒 山崎 晴名 山口 絢子 山根 裕美子 立脇 聡子 広門 未知子 近藤 恵
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1276-1284, 2007
参考文献数
13
被引用文献数
5

【背景・目的】本邦では多数の植物由来食物による口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)を検討した報告は稀である.そこで,本研究では本疾患の臨床的特徴と花粉感作との関連性を明らかにするため,OAS診断例63例について検討した.【方法】6年間に植物由来食物摂取後の口腔症状を自覚した例に被疑食物と花粉のプリックテスト(SPT)や特異IgE測定(CAP-FEIA : CAP)を施行した.【結果】被疑食物のSPTが陽性となったOAS診断例63例(男 : 女=1 : 2,平均年齢 : 28.7歳)の原因食品はリンゴ13例,モモ12例,キウイ12例,メロン11例であった.モモは口腔以外の症状を高率に誘発し,モモとウメの各1例でアナフィラキシーショックに至った.上位4食物のSPT陽性率は55.0〜63.2%であった.リンゴではCAPとSPTと間に相関をみとめたが(r=0.39,p<0.05),メロン,モモ,キウイではみとめられなかった.花粉症の合併は66.1%と高率で,花粉のCAP陽性率はリンゴではハンノキで,メロンではカモガヤ,ヨモギ,ブタクサで高い傾向があった.【考察】SPTとCAPの陽性率は食物の種類によって大きく異なる傾向があり,また,全体として患者の訴えより低い.現時点では,植物由来食物によるOASを診断する際に皮膚テストを用いるほうがよいと考えた.
著者
猪又 直子 大砂 博之 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.38-42, 2006-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

26歳, 女性.カシューナッツを舌にのせた直後より, 舌のしびれ, 咽頭痛, 顔面の〓痒が出現した.既往歴にアトピー性皮膚炎, 気管支喘息はあるが花粉症はなし.検査結果ではカシューナッツについてCAP-FEIAがクラス2, プリックテスト(SPT)は強陽性を示した.カシューナッツと同じウルシ科に属するピスタチオは, 摂取時の症状はなく, CAP-FEIAはクラス2だがSPTは陰性, マンゴは摂取時に上口唇腫脹をみとめたがマンゴ果肉のSPTは陰性であった.以上よりカシューナッツによる口腔アレルギー症候群(OAS)と診断しカシューナッツを除去とした.除去後約1年でカシューナッツのSPTが陰性化したことから, 自験例では花粉抗原などの交差反応性よりむしろカシューナッツによる経口感作によって発症した可能性が高いと推察した.
著者
猪又 直子 大砂 博之 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.38-42, 2006
被引用文献数
3

26歳, 女性.カシューナッツを舌にのせた直後より, 舌のしびれ, 咽頭痛, 顔面の〓痒が出現した.既往歴にアトピー性皮膚炎, 気管支喘息はあるが花粉症はなし.検査結果ではカシューナッツについてCAP-FEIAがクラス2, プリックテスト(SPT)は強陽性を示した.カシューナッツと同じウルシ科に属するピスタチオは, 摂取時の症状はなく, CAP-FEIAはクラス2だがSPTは陰性, マンゴは摂取時に上口唇腫脹をみとめたがマンゴ果肉のSPTは陰性であった.以上よりカシューナッツによる口腔アレルギー症候群(OAS)と診断しカシューナッツを除去とした.除去後約1年でカシューナッツのSPTが陰性化したことから, 自験例では花粉抗原などの交差反応性よりむしろカシューナッツによる経口感作によって発症した可能性が高いと推察した.
著者
田中 理子 猪又 直子 松浦 みどり 石田 修一 鈴木 亜希 蘇原 瑞恵 相原 道子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1258-1264, 2014-11-01 (Released:2017-02-10)

20歳女性.感冒のためジェルカプセルの市販感冒薬を内服開始後5日目に,ヨーグルト摂取後に同薬を内服し,その5分後より頸部に熱感や〓痒を自覚した.次第に全身の潮紅,腹痛,呼吸苦が出現し意識を消失したため,前医に救急搬送された.アナフィラキシーショックの疑いで当科に紹介受診となった.血液検査でImmunoCAP^[○!R]ではゼラチンがclass 4,牛乳は陰性であった.プリックテストでは牛乳は陰性で感冒薬が陽性となった.感冒薬の全成分のプリックテストではゼラチンのみ陽性であり,感冒薬のカプセル成分であるゼラチンによるアナフィラキシーと診断した.ゼラチンアレルギーは,日本では1994年〜2000年頃,乳児期のゼラチン含有DPTワクチン接種によりゼラチンに感作された症例が多く報告されたが,自験例はゼラチン含有DPTワクチン接種後もゼラチン食品摂取での誘発はなく,感冒薬内服による感作が疑われた.ワクチンのゼラチンフリー化が進みアレルギーの報告は著減しているが,薬剤への添加により発症の可能性があるため注意が必要である.
著者
山口 絢子 猪又 直子 広門 未知子 嶋倉 邦嘉 塩見 一雄 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-53, 2007
参考文献数
12

20歳女性.乳児期よりアトピー性皮膚炎.幼少時より生魚を接触した際に〓痒を認めたが経口摂取は可能であった.2年前に回転寿司屋でアルバイトを開始してから,数滴の魚液に接触しただけで手の腫脹が出現した.1年前からはシタビラメやサンマ,アジ,サケ,ホッケ,ブリを加熱調理して摂取時に口唇〓痒や腫脹,アナゴ摂取時に喉頭閉塞感や嗄声,エビやカニを摂取時に口唇腫脹,アワビに似た貝を摂取時に喘鳴や嗄声,呼吸困難,全身性蕁麻疹が出現した.特異IgE抗体やプリックテストでは硬骨魚綱,甲殻鋼,軟体動物等多種で陽性.焼シタビラメによる口含み試験では口唇違和感が出現し,経口負荷試験では口唇腫脹や喉頭閉塞感,嚥下困難感,腹痛が出現した.パルブアルブミンとコラーゲンに対する血清特異IgE抗体は,ELISA法にて検出.以上よりシーフードによる職業性の接触蕁麻疹と口腔アレルギー症候群と診断した.