著者
松井 利郎 桑原 滋 伊福 靖 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-121, 1991-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
12
被引用文献数
2

柑橘果皮油のテルペンレス化を目的として,減圧(4~5mmHg)の蒸留法の適用を試みた.モデル系を用いて,以下のことを明らかにした.1) リモネンとシトラール2成分系で,リモネンの分別蒸留を試みたところ,沸点はリモネン濃度の低下とともに上昇し,特に体積分率が0.4以下で顕著であった.2) リモネン,リナロール,シトラール3成分系においては,リモネンの濃度は60℃まで顕著に減少し,それ以上ではほぼ一定となった.一方,リナロールの沸点は61℃であったことから70℃付近までは含有率が顕著であったが,それ以降では含有率は急激に低下した.従って,目的とする組成のテルペンレスオイルを作製するには抽出温度の設定が重要となることが明らかとなった.つぎに実試料のテルペンレス化を試み,以下のことを明らかにした.3) レモン果皮油のテルペンレス化は60℃, 30分間で最大となり,リモネン含量は約1/26に減少した.一方,シトラールは50℃でテルペンレス化を行ったとき最も効率よく濃縮され,全体の約27%を占めた.4) バレンシアオレンジ果皮油においては,香気寄与の高いリナロールの含量が50℃, 30分間の蒸留で約7倍となり,より芳香性に富むオイルを得ることができた.