著者
伊東 裕子 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.133-139, 1983-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3
被引用文献数
1

コーヒー豆粉粉末の香気定量法として用いる内部標準を使ったヘッドスペースガス分析法において,粒度および焙煎度の影響を検討した。(1) コーヒー豆粉末ヘッドスペース中の香気成分量は粉末粒度に大きく影響され,中程度の粒径(20~28メッシュ)において最大となった。(2) 内部標準物質のピーク高は粒度が小さくなるに従い減少し,コ-ヒー豆粉末粒子表面積との間に高い相関(r=-0.974)が見られた。従って内部標準物質のピーク高を粒度分布に関して補正することが可能となった。(3) 焙煎が深くなるに従い,内部標準物質のピーク高は減少し, L値との間に高い相関(r=0.965)が認められた。そこで,焙煎度の異なる試料の比較において,一定のL値における内部標準物質ピーク高に換算する補正法を設定した。
著者
小柳津 勤 下田 満哉 松本 清 後藤 正
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.327-334, 2002-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
26
被引用文献数
4 5

茶芽の熟度が緑茶の香気成分の変化に及ぼす影響を明らかにし検討を加えた.茶葉は'やぶきた'品種園から一番茶期および二番茶期において生育初期の極若い茶芽から生育の進んだ極硬い茶芽まで数日置きに17回摘採し,速やかに荒茶製造した.官能検査スコアと中性デタージェント繊維含有率との間には-0.859の高い負の相関があり,茶芽熟度は若芽香(みる芽香)およびこわ葉臭に大きく影響することが認められた.GC分析およびGC-MS分析により128成分が検出され,75成分が同定された.主成分分析の結果,摘採時期による香気成分の特徴的な変動を明らかにすることができた.(E,E)-2, 4-heptadienal, (E,Z)-2, 4-heptadienal, (Z)-2-penten-1-ol, hexanal, (Z)-2-heptenalは,一,二番茶とも摘採初期には含有率が低く,茶芽熟度の進行に伴って含有率が高くなったことから,こわ葉臭への寄与が示唆された.linalool oxide (cis-pyranoid), coumarin, 7, 8-dihydro-β-ionone, (E)-2-hydroxycinnamic acid, heptanoic acidは,一,二番茶とも摘採前期に高い含有率を示し,茶芽熟度の進行に伴って含有率が低下したことから,若芽香や新鮮香など新茶の香りに寄与している可能性が示唆された.linalool, geraniol, linalool oxide (furanoid)は,一番茶で茶芽熟度が進むに従い含有率が高くなり,摘採後期には高い含有率を示したが,二番茶ではその傾向が小さく含有率も低かったことから,こわ葉臭や木茎臭への寄与は小さいと考えられた.(Z)-3-hexen-1-ol, methyl 3-phenyl-2-propenoate, methyl jasmonate, indoleは,摘採時期の影響を受けなかったことから,緑茶本来の香りに寄与する成分と考えられた.
著者
沢村 正義 下田 満哉 米沢 崇夫 筬島 豊
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.7-13, 1977 (Released:2008-11-21)
参考文献数
13
被引用文献数
7 5

温州ミカン果汁の加熱臭成分である硫化水素およびDMSの同定ならびに定量を行った.両物質は,果汁の加熱によって顕著に増加し,100°C,8時間でそれぞれ約300 ppb,約560 ppbに達した.硫化水素は,定性釣に8種の全カンキツ果汁に検出されたが,一方DMSは温州ミカン果汁とバレソシア果汁のみに検出され,他のカンキツ果汁には検出されなかった.バレンシアの場合,生成した量は温州ミカンに比べてきわめてわずかであった.温州ミカン果汁のDMS発生因子としてpH,加熱温度およびカチオン画分の影響を検討した.その結果,pH増大とともに発生量は増加し,pH 7で最高値に達し,それ以上はほぼ一定となった.また,加熱温度80°C以下では発生量は少なかったが,90°C以上で急激に増加した.カチオン画分を除いた温州ミカン果汁では,加熱によってもDMSオミまったく発生しなかった.しかし,カチオン画分のみを加熱するとDMSが発生したことから,DMS前駆体がカチオン画分に存在すると推察した.果汁のアミノ酸分析では,各果汁を通してプロンが主要アミノ酸であった.含硫アミノ酸は,温州ミカンでは加熱前後にほとんど変化が認められなかった.
著者
松井 利郎 桑原 滋 伊福 靖 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-121, 1991-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
12
被引用文献数
2

柑橘果皮油のテルペンレス化を目的として,減圧(4~5mmHg)の蒸留法の適用を試みた.モデル系を用いて,以下のことを明らかにした.1) リモネンとシトラール2成分系で,リモネンの分別蒸留を試みたところ,沸点はリモネン濃度の低下とともに上昇し,特に体積分率が0.4以下で顕著であった.2) リモネン,リナロール,シトラール3成分系においては,リモネンの濃度は60℃まで顕著に減少し,それ以上ではほぼ一定となった.一方,リナロールの沸点は61℃であったことから70℃付近までは含有率が顕著であったが,それ以降では含有率は急激に低下した.従って,目的とする組成のテルペンレスオイルを作製するには抽出温度の設定が重要となることが明らかとなった.つぎに実試料のテルペンレス化を試み,以下のことを明らかにした.3) レモン果皮油のテルペンレス化は60℃, 30分間で最大となり,リモネン含量は約1/26に減少した.一方,シトラールは50℃でテルペンレス化を行ったとき最も効率よく濃縮され,全体の約27%を占めた.4) バレンシアオレンジ果皮油においては,香気寄与の高いリナロールの含量が50℃, 30分間の蒸留で約7倍となり,より芳香性に富むオイルを得ることができた.
著者
本間 由利子 東 信和 下田 満哉 早川 功
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.572-574, 2004-06-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Some studies have reported the differences of odor quality/intensity for the same odorant between orthonasal and retronasal olfaction. These differences could be caused by moisture in the oral cavity and partition of odorants to saliva and oral epithelium. We have to be aware of these differences to understand the effect of each component to overall flavor perception. In flavor research, gas chromatography-olfactometry (GC-O) techniques are frequently employed, as a valuable technique for detecting odorants in a sample matrix. However, all studies have been performed by only orthonasal olfaction, which detects odorants by “sniffing”. We tried to apply retronasal olfaction to GC-O technique and compared the differences in odor perception with orthonasal olfaction. Therefore, we “puffed” the odorants eluted from the GC into the mouth to make retronasal responses. As results, aromagram by retronasal olfaction generally showed lower sensitivity than by orthonasal olfaction. Furthermore, odor quality of some components was different between retronasal and orthonasal olfaction.
著者
伊東 裕子 熱田 純生 柴田 敬二 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.435-441, 1983-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3
被引用文献数
2 3

内部標準法によるコーヒー粉末のヘッドスペースガス分析法を用いて標準アロマグラムを作成するとともに,種々の包装形態における保存中の品質変化の違いを比較した。(1) 工場規準に基づいて焙煎(10回,生豆100kg/回)した同一種類の豆についてガスクロマトグラフ分析および官能検査を行い,標準アロマグラムを作成した。得られたアロマグラムは満足すべき再現性を示し,今後品質管理の基準として有用と考えられた。(2) 3種の包装形態においてコーヒー粉末を6ヵ月間貯蔵した。「劣化の有意差*」があらわれるのはピーク5対ピーク8比を基にしていずれも4ヵ月目と判定され,官能検査の結果もこれに一致した。包装形態間の優劣は官能検査では識別されたが,ガスクロマトグラフィーによってはできなかった。
著者
重松 洋子 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.768-777, 1994 (Released:2009-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
8 10

エーテル:イソペンタン(6:4)を抽出溶媒とするポラパックQカラム濃縮法により,実際に我々が紅茶を入れるのとほぼ同じ条件で紅茶の香りを抽出・濃縮し得ること,このようにして得られたにおい濃縮物は減圧連続蒸留抽出(SDE)法で得られたムレ臭と強烈な渋いにおいを呈する濃縮物とは官能的にも化学的にも大きく異なることを明らかにした.1. hexanol, hexenol, linaloolおよびgeraniolは,カラム法に比べてSDE法で数倍検出された.一方,α-terpineolおよびnerolは, SDE濃縮物でその含量が顕著に低かった.2. SDE法では,リノール酸やリノレイン酸の酸化により生ずる各種の鎖状アルデヒドおよびbenz-aldehyde含量が顕しく高かった.3. 鎖状のケトン類はSDE濃縮物で高含量を示したが, 2, 5-pyrolidinone誘導体およびβ-ionone誘導体は逆にカラム法で高含量を示した.4. 7種類のラクトン化合物は,いずれもSDE操作中に激減あるいは消滅することが明かとなった.におい濃縮法の違いにより,フレーバーインデックスは2.63(カラム法)から1.22(SDE法)に減少し,濃縮物のにおい特性に決定的な影響を及ぼすことが明らかとなった.
著者
重松 洋子 下田 満哉 吉武 清晴 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-315, 1991-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

緑茶の香気特性を解明することを目的として,評価用語に対して専門の官能検査員がもっている匂いイメージを明らかにするとともに,品質の異なる60種の緑茶の香りを専門の官能検査員により評価し,得られた官能評価結果を数量化理論第3類ならびにクラスター分析により解析した.(1) マイナス要因とされる匂い用語についてはパネリスト間にその匂いイメージに関して若干のバラツキが認められたが,プラス要因の用語についてはイメージが良好に一致していることが明らかとなった.(2) 数量化理論第3類の第1,第2軸上で“おおい香”,“返り香”が特徴的な玉露,“茶の香り”,“新鮮香”,“みる芽香”に優れた上級煎茶,マイナス要因の“こわば臭”,“木茎臭”,“むれ臭”,“いちょう香”,“青臭”,“異臭”などを含む中・下級煎茶を特徴付けることができた.(3) 全情報の80%を要約した数量化理論第3類の第1~第3軸のスコアーを用いてクラスター分析を行なった結果,供試緑茶を匂い特性に基づいて8群に分類することができた.
著者
下田 満哉 佐々木 仁 塚本 祐二 土肥 由長 亀田 弥 箴島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.26-33, 1989-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
4
被引用文献数
3 1

匂い用語のキャラクタリゼーションの明確化と食品の基本的な匂い特性を明らかにすることを目的として, 53種類の食品の匂いと44個の匂い用語との反応パターン行列を作成して,数量化理論第3類とクラスター分析により解析を行なった. (1) 専門家パネルは, 44個の食品の匂い用語を, A:価値のある, B:ボディ, C:焦げ臭・乾燥, D:価値のない, E:生臭い, F:悪臭, G:力量感のある, H:活動的な, I:スパイス, J:フレッシュ, K:乳・油脂系, L:獣肉の12個の匂いグループ(食品の基本的な匂い特性)に分けることができた. (2) 素人パネルは「価値のある」と「活動的な」匂いグループを区別することができなかった.しかしながら,44語中35個の用語が専門家パネルの結果と同じグループに属した.
著者
中田 勇二 下田 満哉 筬島 豊
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.848-854, 1997-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
7
被引用文献数
1

市販品,及び試作品の中からフレーバー特性の異なる29種類のごま油の官能評価を行い,得られた結果を主成分分析により解析し,各々のごま油のフレーバーを客観的に特徴付けた.(1) ごま油のフレーバーを特徴付ける用語として抽象的用語37語,具体的用語26語,計63語が挙げられた.(2) ごま油フレーバーの評価用語として適正であるかどうかみる為にアンケート調査を行い,さらには専門パネルによる実試料の評価に基づいた評価用語のスクリーニングと新たな評価用語の追加を行った結果,香ばしい,劣化した,強い,苦い,軽い,複雑な,後に残る,まろやかな,渋い,ナッツ様の10語をごま油フレーバーの評価用語として選択した.(3) 29種類のサンプルについて,専門パネルにて評価用語10語について6段階で官能評価を行った.得られた評価データを主成分分析で解析したところ,29種類のごま油はそのフレーバー特性に基づいて9つのグループに分けることができた.(4) 熱風焙煎試作品は苦い,渋い,後に残るという共通の特徴を有しており,焙煎強度が高いほど,その傾向が強かった.遠赤外線焙煎試作品は,軽い,まろやかな,ナッツ様,複雑な,香ばしい特徴を有しており,焙煎強度が高いほど,複雑な,香ばしい風味が増し,低いほど軽い,まろやかな風味が増した.