著者
古畑 哲 桑原 穆夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1960, no.15, pp.63-69, 1960-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

紅茶の製造工程で発酵時間の短いものと普通のもの2種類を調製し,これらをいずれも室温と冷温下に分けて1年間貯蔵し,内容成分ならびに品質の変化を検討した。その結果は次のようになつた。3ヵ月ごとに含水量・水色・pHの変化をみた。含水量は室温においた区の変動が大きかつた。水色はいずれも貯蔵期間が長くなるにつれ,濃度が濃くなる傾向を示したが,冷温区はその進み方が少なかつた。pHの変化ははつきりしたことはいえなかつた。6ヵ月ごとにタンニン・全窒素・可溶性窒素の変化をみたが,これについては明瞭な傾向は見出されなかつた。1年後の製品について調べた結果では,水色が貯蔵中に濃くなることについて,メラノイド色素の形成が考えられたので,蒸留水によるセロハン膜非透析部について,糖と窒素の含量をみたところ,糖は存在せず窒素がわずかながら存在していた。重合型タンニンは,90分―室温>45分―室温>45分―冷温区の順となり,水色濃度にほぼ一致した。没食子酸も重合型タンニンも同じ傾向を示した。カテキン類のペーパークロマトグラフィーによる検索では,フェノールの原線上に帯状のフラクションが認められ,これは酸化重合物と考えられた。品質審査では香気・水色・滋味の項目で,いずれも室温貯蔵が冷温貯蔵よりもすぐれていた。
著者
桑原 穆夫 竹尾 忠一 佐藤 哲哉 古畑 哲
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.13, pp.69-73, 1959-04-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

紅茶の製造上欠くことのできない萎凋操作の条件中,空気の温湿度を取り上げ,その高低に基づく影響を,恒温恒湿器を使つて試験した。その結果,予備的試験ではあるが,温湿度の変化に対応する萎凋の速度・所要時間・茶葉温ならびに品質的に許される範囲,傾向などについて一端をうがうことはできた。終りに,測定に協力していただいた当室の渡辺,川上両氏に感謝する。
著者
桑原 穆夫 竹尾 忠一
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1966, no.26, pp.48-57, 1966-11-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
3

1,揉ねん室の温度を15℃から45℃の間を5℃間隔に変え,茶葉温度を室温に近い温度に保ちつつ揉ねんし,その製品の品質を比較した。2,茶葉の発酵力は,揉ねん中葉温が44℃になった場合に低下がみられた。3,茶葉のタンニンは,揉ねん室温度が低い場合は揉ねん中の酸化の進み方は少ないが,これを25℃で発酵させた場合には正常に酸化した。25℃,35℃区は揉ねん中にもタンニンの酸化は進み,その後の発酵中の酸化も正常であった。45℃区は揉ねん中にタンニンの不溶化が進み,発酵力の低下もともなって,発酵2時間後の酸化,重合型タンニン量は少なかった。このため,製品の水色も15,25,35℃間ではあまり差がなかったが,45℃区は色調はさえずうすかった。4,揉ねん室温度によって発酵適期に至る発酵時間は変化し,揉ねん15℃,20℃では180分前後,25℃区:120分,30℃区,35℃区:60~90分と短縮するが,40℃区は若干長くなり,45℃区では発酵120分たっても十分に発酵が進まなかった。5,茶の品質は,揉ねん室温度15℃,20℃,25℃,30℃,35℃区間でみると,茶期による差が若干あるが,この区間ではあまり大きな品質の差がなかったが,40℃区45℃区になると品質は前5区よりも低下し,特に45℃区の品質は劣っていた。しかし,15℃区では揉ねん中茶葉の粘性が減り,揉ねん操作が円滑にゆかない欠陥がみられ,これらの点を考えると,揉ねん中に茶葉温度が20~35℃程度に維持されてることが望ましいように考えられた。