- 著者
-
土屋 泰夫
佐野 佳彦
中村 利夫
梅原 靖彦
大久保 忠俊
中村 達
- 出版者
- 一般社団法人日本消化器外科学会
- 雑誌
- 日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.9, pp.2258-2262, 1999-09-01
- 被引用文献数
-
15
症例は63歳の男性で, 食後右季肋部の疝痛発作のため入院した. 腹部超音波, CT検査で肝前上区域(S8)に胆管内部の腫瘤陰影とその末梢胆管の拡張を認め, ERCPでは同部に辺縁平滑な陰影欠損像を認めた. この後直接胆管造影で腫瘤陰影の脱落, その後再び腫瘤陰影が確認された. 血管造影で肝S8に腫瘤濃染像を呈したため, 胆管内発育型肝細胞癌を疑い手術を施行した. 肝S8表面の腫瘍を認め, 胆管内腫瘍栓は肝門部まで進展していたため, 右葉切除術を施行した. 主腫瘍の割面は被膜形成なく最大径は2.2cmで腫瘍栓に連続性を認めた. 組織学的にはEdmondso III型の肝細胞癌であった. 本邦報告例の臨床的検討では, 肝切除例の予後は姑息的治療例より良かった. 自験例のごとく被膜形成が不明瞭な浸潤性の腫瘍で, 2cm前後の肝細胞癌でも胆管内発育を来すため, 占居部位がGlisson鞘に近い例では十分な範囲の切除が必要である。