著者
新川 祐利 梅津 寛 大島 健一 岡崎 祐士
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.881-888, 2012-09-15

抄録 大麻乱用後に幻覚妄想状態を呈した2症例を報告した。症例1は大麻精神病,症例2は大麻乱用の経験がある統合失調症と診断し,両者の違いを考察した。急性期症状は類似点が多いが,本症例の大麻精神病は幻覚妄想に対し恐怖や緊張を伴わず,妄想内容が了解可能であることが統合失調症と異なっていた。大麻精神病の経過では,大麻による無動機症候群を認め,意欲減退などが原因で社会機能が低下し,統合失調症の陰性症状と類似した。しかし,対人関係の障害や認知機能障害は認めず,治療により社会機能が病前の状態まで回復したことが異なっていた。大麻乱用が統合失調症を惹起する可能性が推察された。
著者
新川 祐利 針間 博彦 梅津 寛 齋藤 正彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.875-880, 2013-09-15

抄録 妻の妄想に感応したパーキンソン病の初老期男性例を報告した。患者はX-11年(53歳)にパーキンソン病を発症した。X-6年(58歳),妻は「電磁波で攻撃され体がしびれる」という身体的被影響体験や「電磁波で悪口を送ってくる」という幻聴とそれらに基づく被害妄想を呈し,翌年,患者は妻の被害妄想に感応した。X年(64歳),2人は当院を初診し別々の病棟に医療保護入院となった。患者には被害妄想とともに幻聴と身体的被影響体験の感応が疑われる訴えもあった。妻が統合失調症を発症した後,患者は妻の症状に感応したと考えられたが,パーキンソン病による精神病症状の鑑別を要した。入院後は抗精神病薬を投与せず,妻からの分離のみで「電磁波」の訴えは消失したため,感応精神病と診断された。パーキンソン病が感応の成立に影響を与えた要因として,心理社会的要因には社会的孤立と妻優位の関係性の強化,脳器質的要因には軽度認知障害による現実検討力の低下が考えられた。