著者
清水 惠司 梶 豪雄
出版者
高知大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

神経幹細胞(NSC)は、自己複製を行いながら非対称性分裂を行うことでニューロンやグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト)を生み出すとされているが、どのようなメカニズムによって分化・誘導されているか解明されていない。bHLH型転写因子であるOlig2は、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OLP)と運動ニューロン(MN)の発生に必須の因子であり、ニューロン/グリア分化制御機構の鍵を握る因子であると考えられている。Olig2は抑制型の転写因子で、下流因子を抑制することによりOLP/MNの発生を誘導すると考えられているが、いまだ直接的な下流因子は同定されていない。オリゴデンドロサイトは、胎生12.5日(E12.5)頃より前脳ではganglionic eminence(GE)、脊髄では腹側のpMNドメインの脳室下層から生じることが証明されている。そこで、E12.5のOlig2ノックアウトマウスと野生型マウスから前脳のGE、および脊髄を採取し、cDNA subtraction法により野生型で発現されているが、ノックアウトマウスで発現しなくなった因子、すなわちOlig2の下流因子を現在も懸命に探索し続けている。一方、最も悪性度の高い神経膠芽腫(GBM)はOlig2転写因子を高率に発現しているとの報告もなされている。そこで我々は、各種グリオーマ細胞株に対し、DNAマイクロアレイを用いて転写因子発現差異について網羅的解析を続けており、現在英文投稿の準備中である。今後とも本研究を継続する事で、腫瘍化に至る過程でのOlig2の役割を解明すると共に、首尾よくOlig2下流因子が同定できれば、パッケージング細胞を改変する事で得られた高力価レトロウイルスベクターを用いて、Olig2下流因子をGBM細胞に導入することで高分化しうるかどうか検証する計画である。
著者
八幡 俊男 清水 惠司 中林 博道 梶 豪雄 政平 訓貴
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌幹細胞は、悪性腫瘍を根治するために重要な標的として考えられている。本課題では、悪性脳腫瘍の細胞株から分離培養した癌幹細胞が、薬剤を細胞内から排出することで化学療法に耐性となる遺伝子(多剤耐性遺伝子)を高発現し、抗癌剤に対して低い感受性を示すことを明らかにした。また、癌精巣抗原遺伝子は、癌幹細胞においてエピジェネティックな因子の制御を受けて高発現することを見出し、免疫療法の標的分子となる可能性が示唆された。