著者
村上 斉 松本 光史 井上 寛暁 森下 惟一 梶 雄次
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 = The Japanese journal of swine science (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-148, 2008-09-05
参考文献数
27
被引用文献数
1

本研究では、色落ち海苔の有効利用の一つとして飼料原料としての利用を考えて、肥育豚への給与が飼養成績、栄養素の利用性、背脂肪厚の発達および豚肉の抗酸化特性に及ぼす影響を検討した。試験では、LWD交雑種の肥育豚去勢8頭(2腹、平均体重55kg)を対照と海苔の2区に割り当て、8週間の飼養試験を行った。対照区の豚には、肥育の前期(体重50-80kg)と後期(体重80-110kg)にトウモロコシ・大豆粕主体飼料を調製して不断給与した。一方、海苔区の豚には、対照区の飼料に色落ち海苔2%を添加した飼料を不断給与した。体重と採食量は毎週測定した。肥育前期と後期の最終週にCr2O3を用いたインデックス法により栄養素の消化率を測定した。また、飼養試験の0、2、4、6、8週目に採血と背部P2位置(最終肋骨接合部における正中線より65mmの部位)における超音波画像解析を行い、血漿中脂質過酸化物と背脂肪厚の推移を測定した。さらに、飼養試験終了後、食肉処理場でと畜して、ロース(胸最長筋)を採取し、無酸素条件で凍結保存した後、解凍後0、2、4日間冷蔵保存のロース中脂質過酸化物を測定した。その結果、対照区に比べて海苔区では、肥育前期の採食量は有意に低下する(P<0.05)ものの、増体量に差はみられず、飼料効率は向上する傾向を示した(P=0.08)。肥育後期の飼養成績に両区間で有意差はみられなかった。肥育前期において、海苔区では、乾物消化率は有意に上昇したが、肥育後期では、両区間に差はみられなかった。測定したP2部位の背脂肪厚に両区間で有意差はみられなかったが、と畜後の格付けにおいて海苔区では厚脂による格落ちは少なかった。血漿中脂質過酸化物の推移を試験前の値と比較してみると、対照区では有意な変化はみられないが、海苔区では0週目に比べて6および8週目に有意に低下した。解凍後に冷蔵2、4日間保存したロース中脂質過酸化物の値を解凍直後の値と比較してみると、対照区では有意な上昇がみられるが(P<0.05)、海苔区では有意な上昇はみられなかった(P=0.06とP=0.09)。
著者
古谷 修 梶 雄次 浅野 猛 村山 隆一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.407-413, 1988
被引用文献数
1

フスマ,脱脂米ヌカ,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールの豚小腸末端までのアミノ酸および粗蛋白質(CP)の真の消化率を,小腸末端にカニューレを装着した9頭の子豚(開始時体重約30kg)を用いて測定した.実験1では, トウモロコシとコーンスターチを主体とする基礎飼料(CP3.3%)およびそのコーンスターチをフスマあるいは脱脂米ヌカで代替した飼料の合計3種類の飼料を用い,1試験期間4日間として3期にわたって消化試験を実施した.各期では4頭の豚に3種類の飼料のいずれかを,1日目の午後5時から8時間間隔で1日3回,400g宛給与し,3,4およびつぎの試験期間の1日目にあたる5日目の午後1~3特に小腸内容物を採取して分析に供した.消化率は酸化クロム法によって求めた.実験2では,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールを供試し,基礎飼料およびそのコーンスターチの全部あるいは一部を各飼料原料で代替した4種類の合計5種類の飼料,5頭の豚および5試験期間による5×5のラテン方格法によって実施した.その他の条件は実験1と同様であった.試験の結果はつぎの通りである.小腸末端までの真の全アミノ酸平均消化率は,フスマ,脱脂米ヌカ,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールで,それぞれ,85.6,70.4,81.7,80.4.,73.1および76.6%であった.また,CPの真の消化率は,それぞれ,82.1,65.8,79.8,71.2,73.8および76.2%であった.必須アミノ酸のうちでもっとも制限となり易いリジンの小腸末端までの真の消化率は,それぞれ,85.6,70.9,77.3,82.6,74.0および66.5%であった.必須アミノ酸のうち,アルギニンの消化率が全飼料原料の平均で87.2%となりもっとも高く,トレオニンは72.4%で最低であった.