著者
花木 麻衣 宮園 弥生 永藤 元道 竹内 秀輔 梶川 大悟 日高 大介 金井 雄 小畠 真奈 高田 英俊
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.43-48, 2021 (Released:2021-05-10)
参考文献数
18

分娩施設外での非計画的分娩により出生した新生児(以下,病院前出生児)の初期対応は主に救急隊が行うが,その教育体制は未だ確立していない.救急隊への周産期救急教育の課題を見出すことを目的に本研究を行った.2008年1月〜2018年12月の11年間で,救急隊による初期対応を受け当院に搬送された病院前出生児は40例であった.救急隊の分娩立ち会いは23例(57.0%)で,出生時の処置は32例(80.0%)がルーチンケアのみであったが,5例で人工呼吸を要し,そのうち1例では胸骨圧迫も要した.アプガースコアの採点は16例(40.0%)にとどまり,児の状態把握が不十分である可能性が示唆された.児の異常所見では体温36.0℃未満の低体温が最も多く24例(60.0%)に認め,保温方法にも課題が残ると考えられた.救急隊が周産期救急に関連した講習会を受ける機会は増えており,これらの課題に重点を置き,より実践的なシミュレーション教育を行うことが望まれる.