著者
大久保 由希子 森 アッティラ 中山 智央 千葉 進 中根 俊成
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.631-635, 2019 (Released:2019-10-26)
参考文献数
9

症例は84歳女性.無言無動を繰り返し,発話時は体が溶けるとの奇異な妄想があり,体位変換に関連しない著明な血圧変動,尿閉・便秘を認めた.頭部MRI上,特異所見はなく,髄液蛋白は軽度高値,細胞数は正常だった.除外診断で,何らかの自己免疫性脳症を疑い,ステロイドパルス療法を施行し,精神症状・自律神経障害は改善した.後に抗自律神経節アセチルコリン受容体(ganglionic acetylcholine receptor; gAChR)抗体陽性が判明し,限定的ながら免疫療法が有効であったので,同抗体に関連する脳症の可能性も示唆された.同抗体陽性の脳症/脳炎の報告例は少なく,貴重な症例と考え報告した.