著者
今井 浩三 山下 健太郎 林 敏昭 村上 理絵子 高橋 裕樹 杉山 敏郎 千葉 進 谷内 昭
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.324-328, 1993-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

31歳女性.数年の経過で全身倦怠感があり,自宅で臥床していたが,全身倦怠感,関節痛,頭痛および眼瞼下垂を主訴として,精査を求めて平成4年4月当科入院.諸検査より慢性疲労症候群(CFS),シェーグレン症候群ならびに重症筋無力症を疑われたが,アメリカCDCの診断基準に基づいてCFSと診断した.一方, CFSは他の慢性疾患が除外されなければ診断できないため,鑑別診断を試みた.シェーグレン症候群に関しては唾液分泌能試験およびSchirmer試験陽性であり,疑い例とされたが,自己抗体を含めて他の検査は陰性であった.重症筋無力症については眼瞼下垂,外眼筋麻痺が認められ,またテンシロンテスト陽性と判断されたが,誘発筋電図,抗AChR抗体は陰性で確定診断に至らなかった. CFSは注目すべき疾患と思われるが,本症例のようにいくつかの自己免疫疾患と鑑別が困難な場合もあると思われ,その点で興味がもたれたので報告した.
著者
本井 ゆみ子 松本 博之 千葉 進 野呂 浩史 梁田 由樹子 宮野 良子 兼重 裕
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.137-143, 1992-02-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

【対象と方法】脊髄小脳変性症患者19名に重錘または弾性緊縛帯を足首および腸骨稜の高さで腰部に負荷し,負荷前後における重心動揺の改善率を求めた.その成績を起立・歩行状態,神経症状,およびMR画像と対比検討した.【まとめ】(1)重錘負荷時では足首と腰部負荷時改善率との間に相関を認めた(p<0.01).(2)足首および腰部前面重錘負荷は歩行が顕著に障害されているものの,独歩が可能な例に有効例が多い傾向にあった.(3)重錘負荷では深部腱反射亢進群は非亢進群に比較して有意な改善を示し(p<0.01),小脳虫部に比較して橋の萎縮が目立つ症例に有効例が多かった(p<0.05).(4)緊縛帯負荷では重錘負荷で認められた一定の傾向はなかった.
著者
大久保 由希子 森 アッティラ 中山 智央 千葉 進 中根 俊成
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.631-635, 2019 (Released:2019-10-26)
参考文献数
9

症例は84歳女性.無言無動を繰り返し,発話時は体が溶けるとの奇異な妄想があり,体位変換に関連しない著明な血圧変動,尿閉・便秘を認めた.頭部MRI上,特異所見はなく,髄液蛋白は軽度高値,細胞数は正常だった.除外診断で,何らかの自己免疫性脳症を疑い,ステロイドパルス療法を施行し,精神症状・自律神経障害は改善した.後に抗自律神経節アセチルコリン受容体(ganglionic acetylcholine receptor; gAChR)抗体陽性が判明し,限定的ながら免疫療法が有効であったので,同抗体に関連する脳症の可能性も示唆された.同抗体陽性の脳症/脳炎の報告例は少なく,貴重な症例と考え報告した.