著者
森 万純 中村 五月 陶山 啓子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.57-67, 2016

【目的】認知症の診断を受けている術後急性期患者に対して,看護師がどのような要因から4点柵の実施を判断しているのか,またその判断に影響を及ぼす看護師の背景を明らかにすることを目的とした.【方法】外科病棟に勤務している看護師に,抑制の三大原則の認識および転倒・転落予防のための4点柵実施を判断する要因等について無記名自記式質問紙調査を実施した.【結果】分析対象は547人であった.認知症の診断を受けている場合,4点柵の実施に同意できる者は170人(31.1%)であった.認知症の診断があり,かつ興奮状態や落ち着きのない行動がみられる場合でも,どちらともいえない,同意できないと回答した者が合わせて約4割であった.認知症の診断を受けている術後急性期患者の4点柵実施の判断に影響を及ぼしたのは,「ICUまたはHCUに勤務している」「3交替勤務」「看護倫理研修の受講」の3要因で,これらの群は有意に4点柵実施に同意する割合が高かった.【結論】認知症の診断を受けている術後急性期患者に対する4点柵実施に同意するかどうかの判断は,職場環境の影響があることが明らかになった.
著者
森 万純
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

術後4日以内の急性期患者に対する身体抑制の実施に至る看護師の判断要因を明らかにした。その結果、チューブ類に触れるあるいは触れないに関わらず、ベッド上でそわそわと寝たり起きたりを繰り返すなどの動作がみられる場合や、過去に術後せん妄を発症したり、何らかのルート類を自己抜去したことがあることや転倒・転落の既往が身体抑制の実施の判断の鍵となっていた。また、いつもより多重業務を行わなければいけないという医療者側の人的環境も抑制実施の判断要因の一つであることが明らかとなった。看護師が少しでもジレンマを感じることなくケアできるように、身体抑制実施の判断基準の構築および環境面の整備の必要性が示唆された。