- 著者
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森 樊須
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1991
マレ-シアのFicus属植物から発見したツメダニの一種Hemicheyletiamoriiは葉裏の葉縁部に薄い粗い綱を張って、その中に家族(雌、第2ニンフ、第1ニンフ、幼虫、卵)が群居している。産雌単性生殖で、雄はいない。Ficusでの密度は100葉当たり4.3巣、巣内の齢構成は(平均個体数)、雌3.48、第2ニンフ4.36、第1ニンフ5.82、幼虫5.19、卵4.27であった。輸入後の試験ではナミハダニ、タケスゴモリハダニ、ケナガカブリダニ、チリカブリダニの成虫を捕食した。H.moriiの家族は巣に接近した餌の脚部を触肢で瞬時に捕獲、家族共同で捕殺することが多い。摂食所要時間は約50〜120分、餌の死体は巣外(葉外、葉縁部、巣から離れた葉面上)に、捕食に参加した1個体が担いで投棄する。H.moriiは巣をはなれて葉内を単独で歩くワンダ-リングを行なうことがある。雌1、ニンフと幼虫25の巣では、雌個体が巣をはなれ葉表・裏を36分間かけて一巡して巣にもどった。次に雌3,ニンフ・幼虫22の巣では、雌1個体が日中から夜に立て続け20分間、51分間、38分間のワンダ-リングを行なった。ワンダ-リング中に他巣の雌を実験的に接触させても干渉しないことや、巣内に群居する個体は、他の巣からの個体を排撃することなく自分の巣内に受入れることなどから、ワンダ-リングは分散前の先駆的な行動と考えられた。従従供試したFRIM(マレ-シア森林研究所)のFicus葉から採集したツメダニ(Ficus系統)と、遠隔地のタケから採集したツメダニ(Bamloo系統)を用いてpermeability(浸透性)を実験した。両系統のツメダニ個体は、同系統間においても、他系統間においても、他の巣からの侵入(intruder)と巣内への受入れ(receiver)を行なった。このことから、これらグル-プメンバ-相互の親近性は、種の社会性の指標と見られている凝集性cohesivenessを示したことになる。巣を構成するメンバ-にとって、捕食・防衛・増殖上有利かもしれない。