著者
旭 浩平 森 海里 中山 雅人 西浦 敬信
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J104-D, no.4, pp.186-197, 2021-04-01

パラメトリックスピーカは,音響信号の振幅によりキャリアと呼ばれる超音波を変調した振幅変調波を大音圧で放射することで超指向性を実現する.振幅変調波を放射すると,空気の非線形性により,音響信号が自己復調する.しかしながら,パラメトリックスピーカは空気の非線形性に基づいて音響信号を復調しているため,復調音の音圧が小さい.また,パラメトリックスピーカから振幅変調波を長時間放射することにより,超音波素子の疲労破壊が発生し,周波数ピーク雑音が発生する.そこで,本論文ではアドバンスドキャリアを用いてこれら問題を解決する手法を提案する.アドバンスドキャリアとはパラメトリックスピーカのもつ各問題点を解決するための最適なキャリアであり,キャリアの波形や周波数を目的に合わせて制御する特徴をもつ.具体的には,復調音の音圧を改善するために,キャリアの波形がもつエネルギーを増幅した矩形アドバンスドキャリアを最初に提案する.次に,周波数ピーク雑音を低減するために,キャリア周波数が超音波素子の共振周波数を中心に時間遷移する周波数アドバンスドキャリアを提案する.評価実験の結果,各提案手法の有効性を確認した.