著者
森 直也
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.72-80, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
37

企業が実施するセールス・プロモーションとして,確定インセンティブおよび不確定インセンティブは共に頻繁に用いられている。一方の確定インセンティブとは,消費者がポイントなどの報酬を必ず獲得できる形態のインセンティブであり,他方の不確定インセンティブとは,消費者がポイントなどの報酬を抽選によって獲得できる形態のインセンティブである。これまで,インセンティブに関する研究の大半は,消費者のリスク回避性に着目し,必ずしも望ましい報酬を獲得できるとは限らないというリスクと結びついている不確定インセンティブは,確定インセンティブほど選好されないと主張してきた。しかしながら,近年では,不確定インセンティブに対して肯定的な研究が増加しており,注目を集めている。インセンティブに対する実務的および学術的な関心が高まっている状況に鑑みると,これまでのインセンティブに関する研究知見を整理し,残された課題を明確化することは,有意義な試みであると言いうるであろう。そこで本論は,確定インセンティブおよび不確定インセンティブに対して肯定的な既存研究を概観する。そして,今後の研究には,新たな研究潮流の形成が求められるということを指摘する。