著者
森下 順子 森下 正康
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13425331)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.43-50, 2006-02-28

母と子の相互作用の中で子育てが進行し、母親が子どもに影響するように、母親自身も子どもから影響されると考えられる。本研究の目的は、子ども自身が持って生まれた気質が、母親の行動や養育態度にどのような影響を及ぼすかを検討することであった。3才児をもつ母親475名を対象に、子どもの気質・母親の行動特徴・養育態度について調査を行い428名のデーターを得た。主要な結果は次の通りであった。(1)パニックになりやすい男児の特徴が、母親の激しい感情表出をひきおこすことが明らかとなった。男児は、パニックになった場合、一般的に動きも激しいため、母親も激しく反応してしまうと考えられる。(2)情緒が安定している男児の特徴が、母親の受容的な関わりをひきおこすことが明らかとなった。育てにくい子どもの場合は、受容的な関わりができずに悩んでいる母親が多かった。(3)パニックになりやすい、あるいは外界に対しての反応が無頓着な女児の特徴が、母親の統制的な関わりをひきおこすことが明らかとなった。一般的に男児と違い女児は、パニックになったとしても、統制的な関わりで対応でき、また、無頓着で反応が鈍い子どもには、母親は、より統制的な関わりになると考えられる。(4)情緒の安定している女児の特徴が、母親の統制的でない関わりをひきおこすことが明らかとなった。穏やかな育てやすい女児から、母親も影響をうけ、お互いに受け入れられるよい関係になると考えられる。以上の結果から、母親の養育態度だけを問題視するのではなく、子どもからの影響も考えられるため、まわりの人たちは母親を受容的にサポートする必要がある。