著者
森岡 慎一郎 桑江 芙美子 大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.201-209, 2017-07-25 (Released:2017-09-05)
参考文献数
35
被引用文献数
2

これまでに本邦の療養病床を有する病院での薬剤耐性菌の疫学的検討や感染症診療への介入に関する報告はない.今回,療養病床を有する病院における薬剤耐性菌の現状を報告し,感染症診療への介入による診療の質の推移を評価した.介入内容は,グラム染色検査を活用した院内コンサルテーション,勉強会を通じた集団教育等であり,介入前(2015年4月~9月)と介入後(2016年4月~9月)の抗菌薬使用量,主な微生物の薬剤耐性率,血液培養採取状況等を後方視的に比較検討した.介入前後でcefmetazoleの抗菌薬使用密度は2.2倍に増加,meropenemのそれは30%減少,levofloxacinのそれは46%減少した.大腸菌のキノロン耐性率,大腸菌におけるESBL産生菌の割合は,それぞれ介入前後で71%から65%,68%から68%に推移した.新入院1000人当たりの血液培養採取セット数は,介入前後で281と859であった.当院では大腸菌におけるESBL産生大腸菌の分離頻度が68%と極めて高く,高度に蔓延していた.また,広域抗菌薬使用量が減少したのは,医師数が少なく勉強会で全医師に効率のよい情報共有が可能であったことが原因として挙げられる.加えて,担当医師が自らグラム染色検査を行い原因微生物を推定したことで初療時から狭域抗菌薬が選択された可能性がある.
著者
森岡 慎一郎 森 雅紀 鈴木 知美 横道 麻理佳 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.241-247, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

終末期がん患者が発熱を呈した際,どのような検査や治療を重視するかという意向は医療者間で異なり,葛藤を引き起こしうる.本研究は,感染症診療に関する医療者間の意向の差異に繫がる要因や葛藤が生じる状況を同定することを目的に,終末期がん患者の診療に携わる医師,看護師20名を対象に半構造化面接を行った.意向の差異に繫がる要因としては,「予測される予後による」「検査・治療が患者の苦痛を伴うか否か」「医師の指示内容を受け入れられるか否か」などの要因のほか,「患者・家族が検査・治療を望んでいるか否か」「検査・治療による患者のメリットがあるか否か」などのカテゴリーが得られた.また,医師・看護師ともにお互いの認識のズレがある時や,相手の意図・指示が理解できない際に葛藤を感じていた.感染症診療に関する意向の差異がなぜ生じるのかを認識することで,終末期がん患者に対するチーム医療の質の向上に繫げられると考えられる.