著者
森島 聡子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.1324-1330, 2019

<p>同種造血幹細胞移植においてHLAの一致したドナーが得られず,代替ドナーからの移植を行うためには,HLAのバリアを乗り越えなければならない。日本骨髄バンクを介した移植では,HLA class Iアリルの不適合およびHLA-DRB1とDQB1が同時に不適合の場合に重症急性GVHDと死亡のリスクになる。HLA-DPB1不適合は,生存には影響しないが白血病再発が減少する。HLA-DPB1遺伝子全領域のゲノム解析をすることで,進化学的に高度に保存されたエキソン3から3'UTRの領域が,エキソン2がコードするペプチド結合部位とは異なる機序でGVHDの発症に関連していることが判明した。近年次世代シーケンサーによるHLA遺伝子全領域の多型解析が可能となり,従来のHLAタイピングでは判明しなかった患者とドナーの不適合が移植成績に影響する可能性も示されており,今後新たなHLAの意義が解明されると期待される。</p>
著者
森島 聡子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1086-1094, 2018

<p>非血縁者間造血幹細胞移植において患者とドナーのHLA不適合は移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす。著者らは特異的なHLAアリルの影響を解析し,患者のHLA-C<sup>*</sup>14:02が不適合の場合に重症急性GVHDのリスクが最も高く,ハイリスクのHLA不適合であることを示した。NK細胞KIR2DLリガンド不適合が重症GVHDのリスクとなるのは,患者のHLA-C<sup>*</sup>14:02とドナーのHLA-C<sup>*</sup>15:02の組み合わせの場合であった。次世代シーケンサーを用いたHLA-DPB1遺伝子全領域の解析と多数例のHLA領域のmulti-SNP解析で遺伝子構造を明らかにし,HLA-DPB1不適合移植において注目されてきたT-cell epitope不適合モデルとHLA-DP発現モデルはHLA-DPB1遺伝子の進化学的に異なる領域を反映している可能性を示した。近年の革新技術を用いたHLA研究が移植免疫のメカニズム解明に繋がることが期待される。</p>