著者
森川 千鶴子 モリカワ チヅコ
出版者
呉大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.16-21, 2004-09

本研究の目的は,痴呆の進行に伴い自分の想いを自ら表出する機会が減少してくる高齢者が,どのような願いを持ち,入院生活を送っているかをから明らかにすることによって,看護・介護者が重度痴呆性高齢者の理解を深め,今後のケアの向上を図ることである。A病院のアクティピティ活動「七夕」に参加した,痴呆性高齢者157人の短冊を対象とした。七夕の短冊は,ひらがなの表現が多く全体的に短い文章になっていた。短冊の全体的な平均文字数は10.7文字であった。短冊は,「元気」「長生き」「家族」「仲良く」「お金」「仕事」「短歌」「その他」の8つのキーワードに分類できた。痴呆性高齢者の認知力は,徐々に進行し障害されてくるが,すべての機能が同時に失われるわけではない。様々な季節の行事は,過去の体験からの長期記憶を掘り起こす貴重な関わりとなり,学習が促進してくると考えられる。保たれた能力を生かした直接的なケアの効果は,日常生活の基本的な動作の反復から生まれてくるのではないかと思われる。痴呆が進行してくると,本人自らが積極的にアクティピティ活動に参加することは難しくなることから,看護職は介護職・作業療法士ら他職種と連携を取りながら,アクティピティ活動への参加を促していく必要がある。
著者
森川 千鶴子 岩江 美津子
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.59-66, 2003-12

この症例報告は,重度の認知障害により日常生活の基本動作ができない高齢者が,入院という環境の変化に適応していく過程をまとめたものである。本研究の目的は,看護者が実践する基本的な生活援助が,痴呆性高齢者の行動や感情に与えた効果について明らかにすることである。対象は老年期痴呆の80歳代女性Yさんである。生活援助特に食事の摂取状況とアクティビティ活動から分析した。その結果,彼女は食事を分割する介助方法によって,自力摂取することが可能となった。また,塗り絵にも積極的に関わるようになった。彼女は入院によって家族から分離させられ,分離不安を起こしていたが,看護(介護)の援助を通して,彼女は家族の代理として,看護師や他のスタッフと良い人間関係を保つことができるようになった。基本的な生活援助の継続は,痴呆性高齢者に残されている可能性を引き出し,痴呆症の経過の遅延に影響を与えることがこの事例から明らかになった。(英文抄録:Present study described the process of environmental adaptation during the entering a hospital in the patient with severe cognitive disorder who unable to daily action alone. The purpose of this study is to examine the effect of basic nursing care on the daily activities and psychological status in demented elderly. The object of this study is a woman in 80-year-old with senile dementia and assessed using rating scales of ADL (Ability of Daily Life) and activities. As the result, it became possible that she took a meal herself by assistance method for dividing the meal, and it would be also engaged in activities such as a line drawing for coloring. Her psychological status became high anxiety when separated from her family. However, she could keep good human relations by humanistic nursing intervention. This study suggested that the continuation of the fundamental life leads to increased ADL and activities in the demented elderly.)
著者
森川 千鶴子 梯 正之
出版者
広島大学医学部保健学科
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.53-61, 2006-03
被引用文献数
2

65歳以上の地域高齢者を対象に質問紙調査法により生活習慣と抑うつ状況・性格傾向について調査を実施した.387人(男性180人,女性207人)から回答を得た.森本の生活習慣スコア,SDS指数(Self-rating Depression Scale),高齢者用簡易性格検査との関連を検討した.生活習慣スコアが良好な高齢者は51人(13.2%),中庸者116人(30.0%),不良者220人(56.8%)であった.男性高齢者は女性高齢者より,生活習慣スコアが高かった(p<0.05).SDS指数の平均値は52.5点(標準偏差12.0点)を示し,女性高齢者の抑うつ傾向が高かった(p<0.05).生活習慣スコアの不良者はSDS指数が高かった.生活習慣スコアと性格3 因子の関連は,社交性・新奇希求性傾向の高い群,神経症性傾向の低い群の男性高齢者の生活習慣スコアが高くなっていた.生活習慣スコアが低い要因は,高齢者の運動・活動に関する習慣が少ないことであった.「健康日本21」の活動の一環として,老人クラブが主体となり,「ウオーキング」を推進している.この活動を継続することが健康づくり対策にとって重要であるとの示唆が得られた.A questionnaire survey on lifestyle, mental health and personality was carried out among the elderly(age 65 or over) in the community, and a total of 387 (180 male and 207 female) responses were obtained.In the survey, Morimoto's scores for lifestyle, Self-rating Depression Scales (SDS) and the SimplePersonality Test for the elderly were used. The scores on lifestyle showed 51 persons (13.2%) to be good,116 (30.0%) to be intermediate and 220 (56.8%) bad. Males had higher scores than females on average(p<0.05). SDS were also calculated to find an average at 52.5 (SD=12.0). Females showed a higher degreeof depression (p<0.05). The results of the Simple Personality Test showed that male elderly with highsociability and/or novelty-seeking or with low neuroticism tended to have a higher score for lifestyle.Low scores for lifestyle were attributable to less frequent physical activities. The importance ofwalking promoted by clubs for the elderly as a response to 'Healthy Japan 21'was confirmed in the healthpromotion.