著者
森本 司
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.93-103, 2002-03-31

この小論では,個別の言語活動のうち,対話をもとに考えられた理解モデルを,理解の「対話モデル」と呼ぶ。また,テキストにおける理解から考えられた理解モデルを,理解の「テキストモデル」ということにする。そして,両者がP.リクールにおいてどのような関わりを持つかを考察する。リクールの理解モデルが解決しようとしたことは少なくとも二つある。一つは,理解の「テキストモデル」を「対話モデル」から切り離したことであり,もう一つは解釈の対象(テキストの世界)を作者から解放したことである。一つ目の分離によって,作者からのテキストの解放が可能になった。この小論の目的は,リクールが理解の「対話モデル」と「テキストモデル」を理論的に切り離し,分断しすぎた点を問題にしたいということである。基本路線ではこのリクールの主張に従いつつ,細部に疑問が残ることを示した。