著者
成富 真理 畠 榮 福屋 美奈子 鐵原 拓雄 鹿股 直樹 小塚 祐司 森谷 卓也 定平 吉都
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.32-35, 2013 (Released:2013-03-13)
参考文献数
9

背景 : 腎原発悪性リンパ腫はまれである. 腎原発 MALT リンパ腫の 1 例を経験したので報告する.症例 : 59 歳, 女性. 4 年前, シェーグレン症候群と診断された. 健診の超音波検査で右腎に 24 mm 大の low echo 域を認め, CT, MRI で右腎に多発性の腫瘤がみられた. 徐々に腫瘤像の増大を認めたため, CT ガイド下針生検および捺印細胞診を施行した. 捺印細胞診では, 上皮細胞, 多数のリンパ球, 形質細胞, 赤血球を認めた. リンパ球は小∼中型で, 核は類円形∼楕円形, 核クロマチンは顆粒状, 小型で好酸性の核小体が 1 個みられた. リンパ球に異型はみられず, 腫瘍性よりも反応性によるものと考えた. 針生検標本では, 全体に小リンパ球・形質細胞浸潤が強く, リンパ球の尿細管上皮内侵入と思われる像も散見された. 個々の細胞異型は軽微であった. 免疫組織化学では B 細胞性マーカー陽性細胞がより多く認められた. PCR 法で, IgH 遺伝子再構成を認めた.結論 : 細胞診ではリンパ球の異型が弱く, 診断に苦慮した. 臨床所見や画像所見なども参考にし, 慎重に診断を行う必要があると考えられた.
著者
森谷 卓也
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.95-97, 2019 (Released:2019-10-01)
参考文献数
3

2018年5月に『乳癌取扱い規約(第18版)』が発刊された。今回の改訂では国内外の分類との整合性を図ることに重きが置かれ,WHO 分類(第4版,2012年)を強く意識し両者の読み替えが可能となるよう対応表が作成された。また,切除検体の病理学的記載事項チェックリストや索引を設け,使いやすさを重視した。病理組織学的分類では,上皮性腫瘍の良性腫瘍と悪性腫瘍の間に異型上皮内病変の説明が加わった。悪性腫瘍では微小浸潤癌が追加された。浸潤性乳管癌は腺管形成型・充実型・硬性型・その他の4型に分けるが,単なる用語の置き換えではなく,コンセプト自体が変化した。また,乳管内成分優位の浸潤性乳管癌も記載することを求めた。特殊型は,化生癌などで組み換えがなされ,篩状癌など新たな組織型が加わるとともに,混合型のカテゴリーも設けた。病理編第2部では,推奨固定法,センチネルリンパ節転移の表記法,断端評価法,病理学的グレード分類の記載について解説や変更がなされた。ホルモン受容体のAllred score,HER2に対するISH 法も新たに記載された。組織学的治療効果の判定基準については図譜が強化され,評価法の説明も詳しくなった。今後は新規約に準じた症例蓄積による分類法の検証や,次の改訂に向けた課題抽出が必要である。さらに,日本独自の概念・分類法については,本邦からの国際発信がなされることが望まれる。
著者
秋保 信彦 遠藤 希之 井沢 路世 熊谷 勝政 長嶋 真紀 武山 淳二 八重樫 弘 渡辺 みか 森谷 卓也
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.323-331, 2007-11-22
参考文献数
30
被引用文献数
2 4

目的:乳腺における「細胞診および針生検の報告様式(日本乳癌学会)」に従った細胞診成績を導入前と比較し,導入の意義を検討した.方法:15470検体を新報告様式導入前後で2期に区分し,(1)診断区分ごとの比率,(2)新報告様式の数値目標,(3)英国乳腺スクリーニング基準(QA)による感度・特異度などの係数,を比較検討し,(4)癌例において,細胞診で初回に悪性判定できなかった症例の診断確定までの追跡を行った.成績,(1)新報告様式導入により悪性疑い症例の比率が増加し,検体不適正率・鑑別困難率が低下した.(2)新報告様式の目標値では悪性疑い症例中のがん症例の割合と,(3)QAの基準値では偽陰性率(Fls-)が,導入前後を通じ目標に到達しなかった.(4)診断確定のための追加検査のうち,再度の細胞診で悪性判定されたのは18.5%だった.結論:数値変化の原因として,新報告様式の導入効果(組織型推定と根拠となる細胞所見の記載・臨床への判定理由フィードバック)が考えられた.新報告様式の数値目標は精度管理上有益で,QAや文献データとの比較が可能となった.