著者
藤盛 寿一 遠藤 俊毅 田澤 泰 中村 起也 渡辺 みか 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.495-500, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
10

脊髄出血にて発症した脊髄海綿状血管腫の2例を経験した.症例1は72歳の男性で左下肢近位筋の筋力低下,左第2~3腰髄(L)領域の感覚障害および左膝蓋腱反射の亢進を認めた.MRIにて第11胸椎(Th)レベル傍正中左側の海綿状血管腫および第9-10胸椎レベルの脊髄出血を認めた.39病日目に血管腫摘出術が施行され神経症状の回復は良好であった.症例2は65歳の女性で,上腕内側,側胸部,背部の体動時の痛みを左側優位に認めたが他覚的神経学的異常を認めなかった.MRIでは第1胸椎レベル傍正中左側の海綿状血管腫および第6頸椎(C)から第4胸椎(Th)レベルの脊髄出血を認めた.疼痛は半減したが残存した.他覚的異常に乏しいことから経過観察の上,再出血を認める場合には積極的に手術を検討する方針とした.脊髄海綿状血管腫は稀な疾患で,脊髄出血により急性発症する場合があり,個々の症例に応じた治療方針決定が重要となる.
著者
秋保 信彦 遠藤 希之 井沢 路世 熊谷 勝政 長嶋 真紀 武山 淳二 八重樫 弘 渡辺 みか 森谷 卓也
出版者
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.323-331, 2007-11-22
参考文献数
30
被引用文献数
2 4

目的:乳腺における「細胞診および針生検の報告様式(日本乳癌学会)」に従った細胞診成績を導入前と比較し,導入の意義を検討した.方法:15470検体を新報告様式導入前後で2期に区分し,(1)診断区分ごとの比率,(2)新報告様式の数値目標,(3)英国乳腺スクリーニング基準(QA)による感度・特異度などの係数,を比較検討し,(4)癌例において,細胞診で初回に悪性判定できなかった症例の診断確定までの追跡を行った.成績,(1)新報告様式導入により悪性疑い症例の比率が増加し,検体不適正率・鑑別困難率が低下した.(2)新報告様式の目標値では悪性疑い症例中のがん症例の割合と,(3)QAの基準値では偽陰性率(Fls-)が,導入前後を通じ目標に到達しなかった.(4)診断確定のための追加検査のうち,再度の細胞診で悪性判定されたのは18.5%だった.結論:数値変化の原因として,新報告様式の導入効果(組織型推定と根拠となる細胞所見の記載・臨床への判定理由フィードバック)が考えられた.新報告様式の数値目標は精度管理上有益で,QAや文献データとの比較が可能となった.
著者
中村 保宏 鈴木 貴 渡辺 みか 笹野 公伸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-35, 2013

原発性アルドステロン症(PA)は,副腎組織からのアルドステロン過剰産生に伴い高血圧や重症な合併症を引き起こす病態である。通常,PAのうち術前にアルドステロン産生副腎皮質腺腫(APA)と診断された症例において手術が行われ,その後病理学的診断がなされる場合がほとんどであるが,時に腫瘍径が非常に小さいためその病理学的診断が困難なケースも決して稀ではない。その場合,免疫組織化学的検討による病変の同定が有用となる。また,APAとの鑑別診断ではアルドステロン過剰産生を伴う原発性副腎皮質過形成,すなわち特発性アルドステロン症(IHA)の病理学的診断についても十分理解しておくことが重要である。