著者
森重 昌之
出版者
北海道大学観光学高等研究センター
雑誌
観光創造研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-20, 2009-05-15

近年、自律的観光や着地型観光といった「地域主導型観光」が地域づくりのツールとして期待されているが、それがどのように地域づくりに貢献できるかについては具体的に明らかにされていない。例えば財政再建中の北海道夕張市も、自治体主導で観光開発を進めてきたという点では、「地域主導型観光」といえる。そこで本研究では、夕張市の地域運営や観光開発の経緯を整理した上で、地域主導型観光の視点から、夕張市の観光政策の評価を試みた。その結果、夕張市の観光政策は(1)観光を通じて得られた利益が地域資源の価値向上のために再投資されなかった、(2)地域外関係者が観光開発を主導し、地域住民の主体性が形成されなかったことが明らかになった。その上で、地域コミュニティの活性化に向けた地域主導型観光の役割を考察し、地域資源の活用や地域外関係者のかかわりが有用であることを示すとともに、夕張市の地域再生に向けて、地域コミュニティの主体性や地域外関係者のかかわり方を示すビジョンが必要であることを指摘した。
著者
敷田 麻実 森重 昌之
出版者
人間文化研究機構国立民族学博物館
巻号頁・発行日
2006-03-22

近年,地域社会や観光客の「自律性」に着目し,地域主導で創出する持続可能な観光として「自律的観光」が注目を集めている。しかし自律的観光の定義や実現プロセスなどについては,これまで十分に調査・研究されてこなかった。そこで本稿では,観光をデザインする観光地の立場から自律的観光を定義するとともに,観光客の観光デザインプロセスへの参加度合いが,観光地の自律性と関連することを述べた。そして観光地が観光に対する基本的考え方を示し,観光客の持つ多様な知識やノウハウを取り入れる方法として「オープンソースによる自律的観光」が優れていることを示した。また,オープンソースによる自律的観光を実現するためのプロセスモデルとして「サーキットモデル」を応用し,その促進要因としてインターミディアリーとインタープリタが重要であることを指摘した。さらに,デザインプロセスへの主体的参加を実践している登別市ネイチャーセンター「ふぉれすと鉱山」と,そこでインターミディアリーの役割を果たしているNPO法人「ねおす」の事例を紹介し,オープンソースによる自律的観光の実現可能性を検討した。