著者
植戸 貴子 Takako Ueto
出版者
神戸女子大学
雑誌
神戸女子大学健康福祉学部紀要 (ISSN:18836143)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-13, 2011-03

今日の知的障害者福祉分野では,施設から地域への移行が進められている。一方で,いわゆる「親亡き後」に施設入所する人や,地域で様々な課題を抱えながら生活している人も多い。そのため,親によるケアが難しくなった後も,知的障害者を地域で適切に支えていくことが必要となるが,この点の議論はまだ十分ではない。そこで本稿では,知的障害者が地域で安心・安全に暮らし続けるために,どのような支援や仕組みづくりが必要かを探るために,障害者相談支援事業の相談支援専門員等を対象に聞き取り調査を実施した。その結果,地域の知的障害者の「相談支援事例に見られる課題」としては,①本人の要因,②家族関係の問題,③家庭外の人間関係,④危機的状況があることが分かった。また「必要な支援や仕組み」として,①生活基盤の確保,②本人への直接的支援,③本人を取り巻く支援環境の整備,④支援者の支援力などが挙がった。さらに「相談支援の課題」としては,①生活の拠点の確保の問題,②本人の課題への対応,③家族の課題への対応,④サービスの仕組みの問題,⑤相談支援体制の問題が指摘された。今後さらに,知的障害者の地域での自立生活を保障するような支援の仕組みを構築していくことが求められる。
著者
植戸 貴子 杉野 昭博 新道 由記子
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

親による知的障害児者の殺害予防やケアの抱え込みの解消を目的とした相談支援の実践方法について実証的研究を行った。相談支援従事者及び母親に対する調査を実施した結果、子の世話に熱心に取り組む母親には、世話に積極的な意味を見出して子の自立や社会参加を促そうとする「開かれたタイプの母親」と、子と一心同体になり世話に限界や孤立を感じている「閉じたタイプの母親」がいることが分かった。更に「母親によるケアから社会的ケアへの移行」の促進要因と阻害要因を抽出し、それらを踏まえて「社会的ケアへの移行」に向けた相談支援の実践ガイド(案)を作成し、熟練相談支援従事者の意見を踏まえて実践ガイド(案)を修正した。